森の踏切番日記

ただのグダグダな日記です/2018年4月からはマイクラ日記をつけています/スマホでのんびりしたサバイバル生活をしています/面倒くさいことは基本しません

読書

米澤穂信の短編集『満願』の感想

8月の読書録08ーーーーーーー 満願 米澤穂信 新潮文庫(2017/08/01:2014) ★★★☆ ──────────────────── 本書は2014年に刊行された米澤穂信の短編集が文庫化されたものである。本作は、2014年に山本周五郎賞を受賞し、「このミステリーがすごい!」「ミステ…

筒井康隆の短編集『繁栄の昭和』の感想

8月の読書録07ーーーーーーー 繁栄の昭和 筒井康隆 文春文庫(2017/08/10:2014) ★★★★ ──────────────────── 本書は2014年に刊行された短編集が文庫化されたものである。短編が9編とコントが2題、それにエッセイが1編という構成になっている。表題は、…

筒井康隆の作家としての遺書という『創作の極意と掟』

8月の読書録06ーーーーーーー 創作の極意と掟 筒井康隆 講談社文庫(2017/07/14:2014) ★★★★ ──────────────────── 本書は、心して読まねばならない書物である。なぜならば、これは筒井康隆の「作家としての遺言」であるからだ。表題の「創作」は、小説の…

三島由紀夫の『美しい星』読んだら草生えたわ

8月の読書録05ーーーーーーー 美しい星 三島由紀夫 新潮文庫(1967/10/30:1962) ★★★★☆ ──────────────────── 本書は、五月頃に書店で山積みにされているのを見て、懐かしいなと思って購入した。懐かしいなと思ったのは、高校時代に同級生がこの本を読んで…

作者にまったく共感できない小説の感想は書けないものだ

8月の読書録04ーーーーーーー 若冲 澤田瞳子 文春文庫(2017/04/10:2015) ★★☆ ──────────────────── 伊藤若冲『仙人掌群鶏図』西福寺 私が初めて若冲の作品を知ったのは、小学生の時だった。切手の鶏の絵を見て、むっちゃカッコええなあと思い、強く印象…

ゼロから始める現代数学~『無限の果てに何があるか』を読んで

8月の読書録03ーーーーーーー 無限の果てに何があるか 足立恒雄 角川ソフィア文庫(2017/02/25:2002) ★★★★ ──────────────────── 本書は、現代数学の基礎、数体系の構成、公理主義、数学的真理について解説した数学入門書である。実は、本書を読んだのは…

あなたの好きな数式は何ですか?~『眺めて愛でる数式美術館』

8月の読書録02ーーーーーーー 眺めて愛でる数式美術館 竹内薫 角川ソフィア文庫(2017/05/25:2008) ★★☆ ──────────────────── 講談社ブルーバックスに付いている栞にはブルーバックスでお馴染みの科学者による自筆の数式が印刷されている。全部で何種類あ…

AlphaGoに花束を~『人工知能はいかにして強くなるか?』を読んで

8月の読書録01ーーーーーーー 人工知能はいかにして強くなるか? 小野田博一 講談社ブルーバックス(2017/01/20) ★★☆ ──────────────────── 一口に人工知能(Artificial Intelligence, AI)といっても、画像認識とか音声認識とか自動運転車とか対話型AI…

地上の暮らしは大変なのだ~『ウニはすごいバッタもすごい』を読んで

7月の読書録05ーーーーーーー ウニはすごいバッタもすごい デザインの生物学 本川達雄 中公新書(2017/02/25) ★★★★ ──────────────────────────── 一般向けの科学解説書を割とよく読む方なのだが、分野に偏りがあって、数学、物理学、天文学関係の本を読む…

一年振りにあのコンビと再会した~『陰陽師 蛍火ノ巻』

7月の読書録04ーーーーーーー 陰陽師 蛍火ノ巻 夢枕獏 文春文庫(2017/06/10:2014) ★★★★ ──────────────────────────── 夢枕獏の陰陽師シリーズ第14作目にあたる本書は、2013年から2014年にかけて発表された短編を中心に全部で9編の短編が収められている…

井伊直虎関連本を読む(3)

7月の読書録03ーーーーーーー 女城主・井伊直虎 楠戸義昭 PHP文庫(2016/05/11) ★★☆ ──────────────────────────── 今年は、NHKの大河ドラマを初回から見続けて感想も書いてきたのだが、ちょっと飽きてしまった。毎年思うことだが、やはり一年は長い。 …

もっと知りたい伊藤若冲

7月の読書録02ーーーーーーー もっと知りたい 伊藤若冲 生涯と作品 佐藤康宏 東京美術(2011/07/30:改訂版) ★★★☆ ──────────────────────────── 去年、ピンタレスト(Pinterest)で伊藤若冲の作品の画像を集め始めてからおよそ一年が経ち、代表的な作品は…

森見登美彦『夜行』の感想 ~ただ一度きりの朝を求めて

7月の読書録01ーーーーーーー 夜行 森見登美彦 小学館(2016/10/30) ★★★☆ ──────────────────────────── TVアニメ『有頂天家族2』が終わって、森見作品を何か読みたくなったのだが、文庫化された作品で読んでいないのは『恋文の技術』くらいしか残って…

人物像が浮かび上がってこない

6月の読書録01ーーーーーーー 井伊直政 高野澄 PHP文庫(2016/12/14:1999) 1706-01★★☆ ──────────────────────────── 井伊直政の人物像が、もう一つ掴みきれないので何か読んでみようと思って読んでみた。著者の高野澄(たかのきよし)は歴史小説作家だが…

「源氏びと」の聖地巡り

5月の読書録04ーーーーーーー 明解源氏物語五十四帖 あらすじとその舞台 池田弥三郎 伊藤好英 淡交社(2008/05/12) 1705-04★★★ ──────────────────────────── この4月から毎週月曜日に、市内に住んだはる作家のいしいしんじはんが、朝刊に源氏物語の現代…

松岡譲『漱石の印税帖』の感想 ~漱石の娘婿の憂鬱

5月の読書録03ーーーーーーー 漱石の印税帖 松岡譲 文春文庫(2017/02/10) 1705-03★★★ ──────────────────────────── 著者の松岡譲は、明治24年(1891)、新潟県古志郡(現在の長岡市鷺巣町)の寺の生まれ。旧制長岡中学、一高を経て東京帝国大学文学部哲…

『文庫版 書楼弔堂 破暁』の感想~虚実の淡いに浮かび上がる物語

5月の読書録02ーーーーーーー 文庫版 書楼弔堂 破暁 京極夏彦 集英社文庫(2016/12/25:2013) 1705-02★★★★ ──────────────────────────── 明治25年(1892)5月23日、東京の外れで日々無為に過ごしていた高遠彬は、奇妙な書舗と巡り合う。店の名は書楼弔堂…

湊かなえ『リバース』の感想

5月の読書録01ーーーーーーー リバース 湊かなえ 講談社文庫(2017/03/15:2015) 1705-01★★★ ──────────────────────────── 湊かなえにはあまり興味がなくて、これまでに読んだ小説は『少女』だけ、湊かなえ原作の映像作品も全く見ていない、という湊かな…

宇宙138億年の謎を楽しむ本

4月の読書録04ーーーーーーー 宇宙138億年の謎を楽しむ本 佐藤勝彦・監修 PHP文庫(2017/02/15) 1704-04★★★ ──────────────────── 本書は、1999年11月にPHP研究所より刊行された『最新宇宙論と天文学を楽しむ本』をもとに大幅に加筆・再編集したもので、文…

『有頂天家族二代目の帰朝』の感想

4月の読書録03ーーーーーーー 有頂天家族 二代目の帰朝 森見登美彦 幻冬舎文庫(2017/04/05:2015) 1704-03★★★☆ ──────────────────── 本作は、2007年9月に幻冬舎より刊行された『有頂天家族』の続編になる。前作はアニメ化されたが、本作もアニメ化され、…

井伊直虎関連本を読む(2)

4月の読書録01ーーーーーーー 井伊直虎 女領主・山の民・悪党 夏目琢史 講談社現代新書(2016/10/20) 1704-01★★☆ ──────────────────── 本書の著者は、1985年、静岡県浜松市生まれで、近世村落史を専攻する研究者である。 本書は、前半(第一章・直虎の生…

『自己組織化とは何か』を読む(2)

『自己組織化とは何か』を読む(1) - 森の踏切番日記の続き 第3章・細胞が示すインテリジェンス ◾生命の基本単位である細胞レベルで見られる自己組織化の例。 ①シャジクモの酸・アルカリバンドパターン ◾パターン形成とは、形がないところから形ができる…

『自己組織化とは何か』を読む(1)

3月の読書録06ーーーーーーー 自己組織化とは何か 都甲潔・江崎秀・林健司 講談社ブルーバックス(1999/12/20) 1703-06★★★☆ ──────────────────── 「自己組織化」という現象は日常でも見られるありふれた現象なのだが、本書の「はじめに」では例として、雪…

『応仁の乱』(呉座勇一著)を読む

3月の読書録05ーーーーーーー 応仁の乱 - 戦国時代を生んだ大乱 呉座勇一 中公新書(2016/10/25) 1703-05★★★☆ ──────────────────── ◾室町幕府については、足利氏が、細川氏、畠山氏、斯波氏など足利一門の親分で、武家の中で最も勢力があるのが足利一門だ…

『いまさら翼といわれても』の感想

3月の読書録04ーーーーーーー いまさら翼といわれても 米澤穂信 角川書店(2016/11/30) ★★★☆ ──────────────────── 本書は、著者の人気シリーズである〈古典部〉シリーズの現時点での最新作となる連作短編集である。前作『ふたりの距離の概算』からは、6…

春の川を隔てて男女哉 漱石

3月の読書録03ーーーーーーー 千駄木の漱石 森まゆみ ちくま文庫(2016/06/10:2012) ★☆ ──────────────────── 本書は、千駄木時代の夏目漱石について書かれたエッセイだか何だかよくわからない本である。著者は千駄木の地域史として描こうという意図で書…

『ビブリア古書堂の事件手帖7』の感想

3月の読書録02ーーーーーーー ビブリア古書堂の事件手帖7 ~栞子さんと果てない舞台~ 三上延 メディアワークス文庫(2017/02/25) ★★★☆ ──────────────────── ビブリア古書堂に迫る影。太宰治自家用の『晩年』をめぐり、取り引きに訪れた老獪な道具商の男…

井伊直虎関連本を読む(1)

2月の読書録06ーーーーーーー 井伊直虎と徳川家康 中江克己 青春文庫(2016/11/20) 1702-06★★☆ ──────────────────── 大河ドラマ『おんな城主直虎』を見続けるかどうか、当初は決めてなかったので、直虎関連本をここまで何も読まずにドラマを見ていたのだ…

『宇宙の絶景』を見る

2月の読書録05ーーーーーーー ハッブル宇宙望遠鏡 宇宙の絶景 沼澤茂美・脇屋奈々代 知的生き方文庫・三笠書房(2017/01/10) 1702-05★★★ ──────────────────── ピンタレスト(Pinterest)では、多くの人が宇宙の画像を集めていて、そういう人のボードを覗…

『重力波とはなにか』を読む

2月の読書録04ーーーーーーー 重力波とはなにか 安東正樹 講談社ブルーバックス(2016/09/14) 1702-04★★★★ ──────────────────── 2016年2月11日、米国ワシントンDCで、重力波望遠鏡プロジェクトLIGO(ライゴ)の記者発表が行われた。その内容は、1916年…