🙀複雑系について、分かっているようで分かっていないような知ってるようで知らないような、そんなもやもやした感じがあったので、一度ちゃんと勉強し直してみようと思って、まず読んでみたのが、
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カオスー新しい科学をつくる
ジェイムズ・グリック
上田睆亮監修/大貫昌子訳
新潮文庫(1991/12/20)
1608-04★★★☆
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なのだが、本書は科学史に対して多少偏見があり自家撞着が見られるところもあり、それが少し気になった。特に素粒子物理学に対する偏見がかなりあると思う。古いものよりも新しいものの方が良いとする進歩史観的な態度や現代の価値観で過去を批判する態度もあまり感心できない。それで、あまり素直に読むことができなかった。
🐱カオスは「決定論的非線形力学系の不規則で予測不可能なふるまい」というような意味でノイズとも確率論的偶然性とも異なる。つまり、近代物理学の線形の決定論的予測可能性(「ラプラス的幻想」)に対して非線形的な現象では初期値鋭敏性のために予測不可能なのである。しかも決定論的に無秩序(非周期)なのである。
🐱近代科学はデカルト以来、還元主義(全体を要素に分解して網羅的に分析した後に統合して全体を理解する)でやってきて大きな成果を上げてきたのだが、複雑系には、部分の性質の単純な総和にとどまらない性質が全体として現れる「創発」という性質がある。複雑系の多層構造体においては下層の要素とその振る舞いの記述からは上層の挙動は予測が困難なのである。従って、複雑系では還元主義は通用しないことになる。そして、自然現象はだいたい複雑系なのである。
🐱1990年代には、カオスや複雑系という言葉は世間的にもかなり流行したものだが、21世紀に入ってからは、複雑系の研究はブームなのだそうだが、世間的にはあまり聞かなくなったような気がする。それだけ複雑系が当たり前になったということだろうか。この30年程で複雑系の科学がどれだけ進展したのか、その歴史が知りたいと思う。複雑系だとは意識せずに知っていることもあるだろう。
😺今は、『複雑系』(M.M.ワールドロップ/田中三彦+遠山峻征訳)を読んでいるのだが分野が多岐にわたるので頭の切り替えが大変である。『カオス』よりも客観的な文章で好感が持てる。同じ人物も出てくるのだが印象が違う。🐥
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