九月の読書録01ーーーーーーー
こんなに面白いとは思わなかった!
渡邊大門
光文社知恵の森文庫(2015/01/20)
1609-01★★★
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🐱豊臣秀吉没後の状況から関ヶ原合戦終結までを近年の研究成果を紹介しながらほぼ時系列に沿って一般向けに解説している。史料も現代語訳(意訳)で提示されているので素人にも分かりやすい。一項目4ページ以内で全50項目を見出しの質問に答える形でまとめられている。簡潔にまとめられているのが良いとも云えるし物足りないとも云える。
第一部:豊臣秀吉没後のさまざまな謎
🐱Q5「石田三成と徳川家康は最初から対立していたのか?」が興味深かった。
第二部:政治情勢をめぐるさまざまな謎
🐱Q11では「直江状」は本物かどうか考察しているが、これは偽書説が根強い。Q15では「東軍」と「西軍」の呼称は正しいのか考察しているが、分かりやすいからよいのではないか。関ヶ原における位置関係を基準にしても、家康と三成・輝元の位置関係を基準にしても間違いではないのだし、他に考察することがあるだろうと思う。
第三部:関ヶ原合戦前哨戦の謎
🐱ここでは、鳥居元忠、京極高次、細川ガラシャ、細川幽斎、織田秀信を取り上げている。ガラシャの自害を取り上げた短編小説を以前読んだ覚えがあるのだが誰の作品か忘れてしまった。Q29は第二次上田合戦。
第四部:関ヶ原合戦における攻防の謎
🐱Q32で「毛利輝元が東軍に寝返った経緯とは?」とあるが、この見出しには違和感を覚える。輝元には、やはり何の考えも無かったのではないかと思う。安国寺恵瓊も吉川広家も毛利家のために善かれと思いそれぞれ逆方向に動いた結果、輝元自身は中途半端なことになったという印象である。Q33の小早川秀秋は若すぎた。Q37は「島津退き口」について。
第五部:諸大名たちのその後の謎
🐱ここでは、黒田如水、上杉景勝、伊達政宗、毛利輝元、長宗我部盛親、立花宗茂、宇喜多秀家を取り上げている。宇喜多秀家の人生は興味深い。堺屋太一の小説で読んだ覚えがある。輝元が西軍と見なされたのは所領削減の経緯からも明らかではないだろうか。Q49「秀頼の処遇はどうなったのか?」だが、徳川家康はあくまで大義に則りながら権力の簒奪を目指したのであり、そこが慎重かつ巧妙であったと考える。
🐱やはりちょっと物足りない感じがするし、違和感を覚える部分がある。もう少し詳しく書いて欲しかった。ほぼ時系列に沿っているので頭の中を整理するには役立ったかも知れない。巻末の年表はよくまとまっている。地図は九月十五日の関ヶ原の両軍の配置図のみ。他の本と合わせて読む方が良いと思う。
関連図書ーーーーーーーーーー
知れば知るほど面白い!
「その後」の関ヶ原
二木謙一監修
じっぴコンパクト新書(2015/07/10)
1608-02★★★
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🐱西軍、石田三成をはじめ27名、東軍、徳川家康をはじめ28名、さらに、おね、淀君等、女性5名を取り上げ関ヶ原合戦での行動、戦後の処遇、子孫の「その後」を紹介している。石田三成の子孫も改名して江戸時代を生き延びている。だいたい有名な武将ばかりである。「内府ちかひの条々」や「直江状」の要約も紹介している。基本的な情報は押さえてあり、主な武将の家系図や合戦後の諸大名の賞罰一覧、地図、年表もある。
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「その後」が凄かった!
関ヶ原敗将復活への道
二木謙一編著
SB新書(2016/05/15)
1607-04★★★
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🐱西軍を中心に34名(+4名+5家)の武将を取り上げている。人数が少ない分ひとりひとりの記述が詳しく、大坂の陣までフォローしている。各武将の上に家紋が載っているのが良い。ただ、類似書と差別化を図るつもりなのか、敗将から学ぶ処世術というテーマで各項目の終わりに教訓が書かれているのだが、はっきり云っていらない。まったく残念である。
😺いずれの本も長短あって、これは、という本は無かった。色々読み比べた方が良いようである。🐥
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