森の踏切番日記

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夏目金之助の鏡子への手紙 

漱石鏡子夫妻まとめ(2)

🐱土曜ドラマ夏目漱石の妻]に合わせて漱石鏡子夫妻についてまとめております。今回は夏目金之助英国留学時代をまとめてみます。漱石が鏡子にあてた手紙を中心に紹介してみます。ただし、なるべく読みやすいように現代風に改めた部分があります。

 

 

夏目金之助の鏡子への手紙

文部省から英国留学を命ぜられた夏目金之助は、明治33年(1900)7月上京、鏡子の実家の中根家を妻子の寄寓先とし、9月8日、ドイツ汽船ブレーメン号で横浜を出帆する。シンガポールを経由し、インド洋を西へ西へと航海し、紅海に入りスエズ運河を抜けて地中海に入り、ナポリに着いたのは10月17日である。昔の人は大変だ。パリ万博を見物した後、ロンドンに着いたのは10月28日の夜である。この間、金之助は何通か鏡子に手紙を書いている。当時、鏡子は第二子を妊娠中で、金之助はかなり心配していたようである。

 

まずは、9月27日付の船中からの手紙から、その一部を。

其許(そこもと)は歯を抜きて入れ歯をなさるべく候。ただ今のままにては余り見苦しく候。

 頭のはげるのも毎々申す通り一種の病気に違いなく候。必ず医者に見てもらいなさるべく候。人の言うことを善い加減に聞いてはいけません。

心配しているのか、細かいのか。漱石は鏡子のハゲをかなり気にしていたらしく、『吾輩は猫である』でもネタにしている。また、鏡子は歯並びが悪かったようだ。

 

次は、10月8日付の手紙から、その一部を。この日、金之助はアデンに着いている。

毎々ながら西洋食には飽き飽きいたし候、かつ海岸は小生の性に適せざる事とて横浜出帆以来眼がよほどくぼみ申し候。しかし別段の病気もなく先ず先ず無事なれば御安堵下さるべく候。

 筆(長女)はその後丈夫に相成り候や。随分お気をつけ下さるべく候。 

留守中とてむやみに寝坊なさるまじく候。

そこで寝坊のこと言うか。かなり気にしているのな。この後も、丸髷・銀杏返しにはするなとか、髪はちゃんと洗えとか、結構うるさい。この手紙で金之助は次の俳句もしたためている。

 雲の峰風なき海を渡りけり

 

次は、10月23日付、パリからの手紙の一部を。

其許(そこもと)懐妊中よくよく身体を大事になさるべく候。筆も随分気を付けて御養育なさるべく候。妊娠中は感情を刺激するような小説などは御止めなさるべく候。なるべくのんきに御暮らしなさるべく候。

 入れ歯の事御実行なさるべく候。丸髷などには結わぬがよろしく候。洗髪しかるべく候。

まだ言うたはる。パリでも。髷(まげ)を結ったり髪を洗わなかったりするとハゲるからと気にしているのである。また、鏡子は(ドラマの通り)通俗的な雑誌の小説を寝ころんで読むことが好きだった。この手紙の追伸には次のように書かれている。

欧州に来て金がなければ一日も居る気にはならず候。穢くても日本が気楽で宜しく候。


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※1900年のパリ万博の会場風景。エッフェル塔は1889年 建設。漱石エッフェル塔に登ったことを手紙にも日記にも書いている。右奥に見えるのは、当時世界最大100㍍の観覧車グランド・ルー・ド・パリ。

 

ロンドンに到着した金之助は下宿を探すが、下宿料や書物の高いのに驚いている。年内に二回下宿を変えている。12月下旬、三番目の下宿に引っ越した直後の長めの手紙から、その一部を。

当地にては金のないのと病気になるのが一番心細く候。病気は帰朝までは謝絶するつもりなれど金のなきには閉口いたし候。

 十円くらいの金は二、三回まばたきをすると烟(けむり)になり申し候。今度の下宿は頗るきたなく候えども安直故辛抱致しおり候。なるべく衣食を節して書物だけでも買えるだけ買わんと存じ候故非常にくるしく候。

 筆も丈夫に相成り候よし、何より結構の事に候。なるべく我が儘にならぬよう甘えぬよう、可愛がりてむやみにあまき物などやらぬよう、むやみに座らして足部の発達を妨げぬよう御注意なさるべく候。

小児の教育ほど困難なる物はこれ無く精々御心配願上候。

他に、下宿の印象やロンドンの印象などもこの手紙には書かれている。

※二番目の下宿については、『永日小品』の「下宿」「過去の匂ひ」に描かれている。

 

明治34年(1901)、1月26日次女恒子出生。

ところが、第二子誕生の知らせはなかなか金之助の元に届かず、無事生まれたのか早く知りたい金之助はイライラする。そのあたりの手紙は、また明日紹介することにしよう。🐥

 

 


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漱石も訪れたロンドン塔

 

 

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