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森の踏切番日記

人生LARKしたい

『猫と幽霊と日曜日の革命/サクラダリセット1』の感想

11月の読書録03ーーーーーーー

 猫と幽霊と日曜日の革命

 サクラダリセット

 河野裕

 角川文庫(2016/09/25)

 1611-03★★★

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🐱本書は、2009年6月に角川スニーカー文庫より刊行された『サクラダリセット  CAT, GHOST and REVOLUTION SUNDAY』を加筆・修正し改題したもので、今回、実写映画化&アニメ化に合わせて角川文庫から改めて刊行された。これは、米澤穂信の『氷菓』シリーズや桜庭一樹の『GOSICK』シリーズなどと同様の展開である。

🐱『サクラダリセット』シリーズは、読もうかどうか迷ったのだが結局読まなかった作品だった。河野裕の最近作『階段島』シリーズは気に入っていることでもあるし、この機会に読んでみることにした。読書の幅をラノベにまで広げると、さすがに収拾がつかなくなるのでラノベはあまり読まないのだ。

🐱河野裕は、これがデビュー作になる。本書は、小説としては基本的な部分でまだ未熟なところもあるが、『階段島』シリーズと同様に文章の雰囲気が良い。

🐱人物描写に不十分なところがあるのが少し気になった。ラノベだとさし絵が付いているのであまり気にならないが、一般文庫は通常さし絵が付かないので気になるのだ。この点は、今後の作品で改善されていくのだろう。

 

 

 

サクラダリセット  CAT, GHOST and REVOLUTION SUNDAY (角川スニーカー文庫)

「リセット」

たった一言

それだけで、世界は三日分死ぬ。

 

 

 

🔘咲良田(さくらだ)市

🐱咲良田市は、太平洋に面したあまり大きくない街。市民のおよそ半数が物理法則に反した特殊能力を持っている。ただし、咲良田の外に出ると、誰もが能力のことを忘れてしまう。能力の大半はくだらないものだが、中には使い方によっては危険なものもある。そこで「管理局」と呼ばれる公的機関が管理し、問題を処理している。

🐱この特殊能力は、当人が強く望んでいることが具現化するようだ。能力によっては、他の能力と齟齬をきたす事があるが 、その場合は強い方の能力が優先される。この能力の度合いを「強度」と呼ぶ。

 

 

 

🔘登場人物

◾浅井ケイ(あさいけい)

芦原橋高校1年生。一度見聞きしたことは決して忘れない能力を持つ。「奉仕クラブ」所属。事情があって一人暮らしをしている。

◾春埼美空(はるきみそら)

ケイのクラスメイト。「奉仕クラブ」所属。世界を最大三日分「擬似的に」戻す「リセット」能力を持つ。感情表現が乏しい。中学時代は全くの無表情だったがケイと出会ってから多少ましになった。ケイの好みのショートヘアにしている。

🐱「リセット」はケイの指示が無いと発動しない。「リセット」するためには、ある時点を「セーブ」しておく必要がある。「リセット」すると「セーブ」した時点に「擬似的」に戻り、その間の記憶はケイ以外の人間には残らない。つまり、美空は自分が「リセット」したことを忘れてしまう。「セーブ」は72時間経つと効力を失う。また、「リセット」してから24時間は「セーブ」できないという制限がある。新たに「セーブ」し直すと前の「セーブ」はキャンセルされる。

🐱二年前、ケイは「リセット」を発動したために本来死ななくてもよかったはずの少女を死なせてしまっている。そのことが彼の心に大きな傷となって残り、未だ癒えていない。また、この事件がきっかけで二年前にある騒動を起こしている。

リセットが人を殺すようなことが、あってはならない。

中野智樹(なかのともき)

ケイのクラスメイトにして、よき理解者。時空を超えて音(声)を特定の人物に届ける能力を持つ。「リセット」よりも強度が高いので「リセット」後も有効。

◾津島信太郎(つしましんたろう)

芦原橋高校数学教師にして管理局局員。「奉仕クラブ」顧問。「奉仕クラブ」は、管理局からの依頼でいろいろ問題を解決するクラブ。「マクガフィン」と呼ばれる黒い小石のようなものを所持していたが、何者かに盗まれる。無精ひげ。

🐱「マクガフィン」は、これを手にすると咲良田が支配できるという噂の謎の物体。その割には、無雑作に引き出しに入っていたりする。

◾村瀬陽香(むらせようか)

ケイたちよりも1学年上だったが不登校生で現在は同学年。赤い眼鏡をかけた、まっすぐな目をした少女。ある意味で最強の能力を持つ。

◾野ノ尾盛夏(ののおせいか)

大宮高校1年生。猫と情報を共有できる能力を持つ。肌が白い。幼い頃の人間関係の影響であまり少女らしからぬ話し方をする。

◾非通知くん

情報屋。情報を栄養にして生きていける能力を持つ。極度の潔癖症

◾皆実未来(みなみみらい)

ケイのクラスメイト。U研(未確認研究会)に所属。何の能力も持っていなかったが、ある事件に巻き込まれて、ある能力が発現する。表情が大袈裟で目と口が大きく、いつも元気そうに見える。

◾検索さん

管理局局員。大人の女性。咲良田市内の全ての能力を把握している。

 

 


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🔘あらすじ

◾7月15日(土曜日)、ケイと美空は津島の指示で陽香と会い、陽香から、「死んだ猫を生き返らせて欲しい」という依頼を受ける。ケイは、情報屋の非通知くんと連絡をとり情報を買う。その情報をもとに野ノ尾と接触し、その能力を確かめたうえでリセットする。

▶三日前(7月12日・水曜日)の世界に戻ったケイと美空は、三日前の野ノ尾と接触し、事情を説明して協力を要請する。皆実からは前の世界同様、幽霊山の吸血鬼の噂を確かめようと誘われる。翌日、中野から「壁に開いた穴の話」を聞かされる。これは、前の世界では無かった出来事だ。非通知くんとは連絡がとれなくなり、前の世界では起きなかった深刻な事案も発生する。さらに、7月15日(土曜日)には、陽香からは命を狙われる。陽香の持つ能力とは?

▶リセットで危機を乗り切ったケイと美空はセーブしておいた二日前(7月13日・木曜日)の世界に戻る。津島に事情を説明し対策を依頼する。翌日、津島が持っていたマクガフィンが何者かに盗まれる。三回目の7月15日(土曜日)、ケイの推理でマクガフィンは見つかるが陽香が持っていってしまう。津島はケイに陽香を説得して欲しいと依頼する。果たして、陽香の真の目的とは?ケイは如何にして問題を解決するのか?

 

📄詳しくはこちらを
『猫と幽霊と日曜日の革命/サクラダリセット1』時間の流れのまとめ - 森の踏切番日記

 

 

 

🔘感想

🐱プロットがしっかりしているし、込み入った設定や伏線を全てうまく回収していたと思う。シリーズとしての謎も興味深いものがあり、次回作に期待を持たせる内容である。

🐱ケイと美空の関係が気になる。美空はケイを信頼しきっているのか、ケイの言うことは何でも真に受ける傾向がある。美空の独白は普通に解釈すれば恋愛モードである。ケイの方は、何かを引きずっているようだ。二人が知り合ったきっかけが、まだ明らかにされていないし、二人の本当の関係は、今のところ、ハッキリとは分からない。

🐱ケイは、美空には感情ではない何かが欠けていると言う。美空は自分を特別だと考えていないから感情が希薄で主体性がないのだと考えている。何故、彼女はそうなのか、気になるところである。でも、こういう「薄い」子っているよなあと思った。

🐱本書の登場人物は本質的に皆「善」である。特に、人の死を悲しむ気持ちの大切さが強調されているように思う。本書に出てくる「特殊能力」は特技の延長のようなものだと思う。自分の特技が、何かしら世の中の役に立って、たとえささやかでも誰かの助けになればよいという、そういう「優しい物語」 なのだと思う。

🙀主人公は、他者を傷つけることは恐れるが自分が傷つくことは厭わない。そこに主人公の特異さを感じる。

 

 

 

 

 

 

 

春埼美空はごく一部の例外を除く、世の中の大半に興味を持たない。どうしようもなく、ある種の欠落を抱えている。

 

 

 

「世の中はちょっと悲しいことが多すぎると思うんです」

 

 

 

「春埼美空。君は、歪んでいない。誰でも当たり前に持っている、思考や価値観の歪みを持っていない。ゼロでなくても、とても希薄なんだ。だから自分自身さえ特別だと思えない」

 

 

 

だから春埼も黙っていた。会話はあまり得意ではない。言葉を探すというのは、まっ白なジグソーパズルみたいに難しいと感じることがある。

 

 

 

これが春埼美空なのだから仕方がない。この少女は、本来徹底して客観的なのだ。出会った頃はもっと極端だった。すべての判断を、ほんの数行のルールに委ねてしまえるくらいに。

 

 

 

言葉は場合によって、とても無力だと思う。

 

 

 

人は本来、悲しみに弱くあるべきだ、とケイは思う。悲しみの感度が良好だということは、つまりそれだけ優しいということだ。人の優しさには、無条件で肯定されるだけの価値がある。

 

 

 

「ごめんね」

「私は、何も覚えてませんよ」

「うん。でも、ごめん」

 

 

 

 

📄この記事の続き

 

🔘『少年と少女と正しさを巡る物語/サクラダリセット7』あらすじと感想(1) - 森の踏切番日記

🔘『少年と少女と正しさを巡る物語/サクラダリセット7』あらすじと感想(2) - 森の踏切番日記

 

 

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