森の踏切番日記

ただのグダグダな日記です/2018年4月からはマイクラ日記をつけています/スマホでのんびりしたサバイバル生活をしています/面倒くさいことは基本しません

宇宙は数学の言葉でできている

11月の読書録06ーーーーーーー

 神が愛した天才数学者たち

 吉永良正

 角川ソフィア文庫(2011/04/25:2003)

 1611-06★★★

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🐱最近、複雑系関連の本を続けて読んでいるので、気分転換の意味で読んでみた。本書は東京出版の『高校への数学』に連載された「数学者列伝」を一冊にまとめたものである。単行本は2003年に刊行されたのだが、2011年に文庫化されるにあたって、数式を使った話題が大幅に割愛されてしまった。その分一般向けに読みやすくなったと云えるが、少し物足りない内容になったという印象もある。もし、数学に意欲的な子供に本をプレゼントするなら元本の方をプレゼントしたいものである。中学生には、ちょっと背伸びした内容だが、たまには背伸びをした方が背が伸びるというものである(何事も程々が肝心だけどね)。

🐱そんなわけで、文庫版の方は物語中心の人物伝という体裁になっている。数学史上有名なエピソードが数多く収録されているので数学及び数学史入門編としては悪くない内容である。数学に意欲的ではない子供に本をプレゼントするなら文庫版の方をプレゼントした方がよいだろう。少しでも数学に興味をもってもらえると、うれしいな。

🐱著者は、本書の「はじめに」で、子供が数学嫌いになる理由として、1つには、得意・不得意の差がつきやすいことにあるが、もっと大きな理由として、学校数学の中では「数学とは何か」が見えにくいという点にあるのではないかと、指摘している。学校数学は、問題演習による数学的センスの向上に比重がかかりがちで「文化としての数学」のもつ魅力はなかなか伝わらないと主張している。つまり、人間味が足りないということであろう。本書のねらいは、学校数学の欠点を補って、「文化としての数学」の香りを体験してもらうことにあるということである。

 

 

🐱人間というものは、興味がないものに対しては頭を使わないものだから、まずは興味をもってもらうことが大切である。数学的センスは、物事を一面的にとらえる弊を防ぐという意味においても、実生活で有用である。エセ数学やエセ科学に騙されにくくなるという利点もある。損得勘定で考えても数学的センスがある方が得であると思う。

🐱「数学とは何か」というのは、難しい問いだが、吾輩は「宇宙そのもの」と答える。「宇宙は数学の言葉で出来ている」ということだ。人類は数学を創ったのか発見したのかという問いもあるが、人類が存在しなくても数学は存在しているのである。この宇宙とは別の宇宙が存在するならば、別の数学が存在するだろう。数学とは森羅万象そのものである。だから、面白い。

🐱「文化としての数学」というのは、すなわち、人類と数学との関係である。本書で紹介されている数学者は皆、選りすぐりの大天才ばかりなので、あやかろうなどと思ってはいけない。しかし、彼らもまた人間なのである。彼らの人生は、人間味にあふれている。そこには、ロマンがあるし、情緒があるし、深い思想がある。人類が発見した数学は、人類が創り出した数学でもある。人類は未だ数学の全てを理解していないからである。宇宙に他の知的生命体がいるとすれば、彼らの数学が、我々の数学と全く同じとは限らない。

 

 

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🔘本書に登場する数学者たち

 

第1章:古代ギリシアの謎
  1. タレス
  2. ピタゴラス
  3. エレア学派
  4. ソフィスト
  5. エウドクソス

1.のタレスは、数学の祖とも哲学の祖ともいわれている人。日蝕を予言したが、天空に気をとられて井戸に落ちて美女に笑われる。

2.は、ピタゴラス教団の話。「万物は数なり」

3.は、ゼノンのパラドクス(アキレスと亀)の話。

4.と5.は、三大作図問題の話。 

 

 

第2章:ヘレニズムの輝き
  1. ユークリッド
  2. アルキメデス
  3. ヘレニズム中期
  4. ヘレニズム後期

1.は、『原論』の紹介から平行線問題、非ユークリッド幾何学まで、数学的な内容。「幾何学に王道なし」

2.は、ご存知「Eureka, Eureka!」と叫びながら、全裸で街中を走ったことで有名な人。

3.は、地球の円周を初めて計算したエラトステネスや円錐曲線のアポロニウスなど、数学的な内容。

4.は、プトレマイオス(トレミー)とディオファントスで、ヨーロッパ・ルネッサンス時代の数学へとつながるキーパーソンといえる。

 

 

第3章:考える葦と魔術師
  1. デカルト
  2. フェルマー
  3. パスカル
  4. ニュートン
  5. ライプニッツ

1.は、ご存知「cogito, ergo sum」の人。

2.は、ご存知「余白が狭すぎた」人。

3.は、ご存知「考える葦」の人。子供の頃、「考える足」だと思っていたなあ。

4.は、ご存知「最後の錬金術師」。人間的にはかなり問題があったことでも有名。

5.は、ご存知ない人も多いかも知れないが、いじめっ子ニュートンの被害者のひとり。dy/dx、∫、logなど今日使われている数学記号の多くを考え出した人。

 

 

第4章:万能数学者の遍歴
  1. ベルヌーイ一家
  2. オイラー
  3. ダランベール
  4. ラグランジュ
  5. ラプラス

1.は、数学界のバッハ一族。中でもヨハンは問題の多い性格だったと云われるが、レオンハルトオイラーを見出した功績は大きい。

2.は、18世紀最大の数学者。数々のエピソードがある。数学的な部分にももう少し踏み込んで欲しかった。

「一時間で、円周率の30桁くらいは計算できる」

3.のダランベールは、ある貴族が不倫の果てに産み落として教会の石段の上に捨てた人。以後、死に至るまで波瀾万丈の人生を送る。

4.のラグランジュは、革命期の激動のフランスにおいて、どの政権からも大事にされた人。

5.は、ご存知「ラプラスの悪魔」の人。「ラプラスの悪魔」の真意について解説しているのが善い。フーリエにも触れている。

 

 

第5章:数学の帝王一代記
  1. ガウス
  2. リーマン

1.は、ご存知「数学王」。世界三大神童の一人。あとの二人はモーツァルトと誰だろう? この人にも数々のエピソードがある。なかなか詳しい伝記になっている。

対数表がどれほど詩的であるか誰も知らない」

2.は、ご存知「リーマン予想」の人。リーマンを「輝くばかりの直感力の持ち主」と紹介しているが、遺されたメモなどからは、直感力だけではなく地道な計算の裏付けがあることが分かっている。

 

 

第6章:神々の愛でし人々
  1. カルダーノ
  2. アーベル
  3. ガロア

1.は、数学史上有名なルネッサンス時代におけるタルターリアとカルダーノの三次方程式の解の公式を巡る数学バトルの話。四次方程式の解の公式を発見したフェルラーリにも触れている。このエピソードは面白いのでもう少し詳しく書いて欲しかった。

2.は、数学史上有名な悲話。数学の才能は素晴らしいのだが、数学の才能以外は残念な感じの人。とにかく運も金もない。婚約者にみとられながら26歳と8ヶ月で病死。

3.も超有名な話で、ガロアは数学史上最も短く最も劇的な人生を送った数学者といえよう。数学を本格的に学び始めてから(しかもほとんど独学で)わずか数年で歴史に残る仕事をしている。出来れば現代数学におけるその重要性にも触れて欲しかった。激動の19世紀のフランスで決闘に敗れ20歳と7ヶ月で死す。

「20歳で死ぬためには、あらん限りの勇気が必要なんだよ」

本書は、まず第6章から読んだ方がよいかも知れない。🐥

 

 


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Educational Technology and Mobile Learningより

 

 

 

🔘こちらが元本の単行本

数学を愛した人たち

数学を愛した人たち

 

 

 

🔘こちらが文庫版 

 

 

 

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