森の踏切番日記

人生LARKしたい

『魔女と思い出と赤い目をした女の子/サクラダリセット2』感想

11月の読書録09ーーーーーーー

 魔女と思い出と赤い目をした女の子

 サクラダリセット

 河野裕

 角川文庫(2016/10/25:2010)

 1611-09★★★☆

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🐱本書は2010年3月に角川スニーカー文庫より刊行された『サクラダリセット2 WITCH, PICTURE and RED EYE GIRL』を修正し、改題したものである。

 

🐱11月に読み終わっていたのだが、再読しているうちに読書録を書くのが遅くなってしまった。年内に間に合って良かった。

 

 

 

サクラダリセット2  WITCH, PICTURE and RED EYE GIRL (角川スニーカー文庫)

まるで野良猫みたいな女の子。

二年前に死んでしまった、特別な彼女。

 

 

 

🔘咲良田市

🐱物語の舞台となる咲良田市は、ごくありふれた地方都市だが、住民の半数近くが何らかの「能力」を持つ。咲良田の「能力」は、管理局と呼ばれる公的機関によって管理されている。今回、「能力」が38年前に唐突に発現したことが明らかにされる。不思議なことに、管理局は「能力」の発現と共に速やかに組織されている。

 

 

 

🔘マクガフィン

🐱それを手に入れると、咲良田の全能力を支配できるという噂の黒い小石。浅井ケイが所持しているが、今のところ、ただの小石に過ぎない。今回、この噂が二年前に広がったことが明らかにされる。

 

 

 

🔘登場人物

浅井ケイ(あさいけい)

芦原橋高校一年生。見聞きしたことを忘れない「記憶保持」能力を持つ。

◾春埼美空(はるきみそら)

芦原橋高校一年生。世界を最大三日分戻す能力「リセット」を持つ。ただし、リセットはケイの指示がないと発動しない。ケイを信頼し、指示に従う。

◾魔女

管理局の頂点に近い位置にいる女性。人の未来を知る能力、厳密に云うと、未来を知る能力を取り除いた場合の未来をシミュレートする能力を持つ。

◾佐々野宏幸(ささのひろゆき

思い出に浸る男。写真の中の風景を十分間だけ再現しその中に入ることができる。初期の管理局員だった。

◾岡絵里(おかえり)

七坂中学校三年生。赤いカラコンをつけた少女。浅井ケイの後輩。

「まずひとつ。私は近々、先輩からマクガフィンを奪う」

「そして、ふたつ目。春埼美空から、リセットを奪い取る」

「先輩が嫌がるからだよ。当たり前じゃないか。私はね、先輩が大嫌いなんだ」

◾村瀬陽香(むらせようか)

ケイ、春埼と同じ高校に通う。物を消す能力を持つ。

◾非通知くん

情報屋。

津島信太郎(つしましんたろう)

芦原橋高校教師。ケイと春埼が所属する「奉仕クラブ」顧問にして、管理局員。

中野智樹(なかのともき)

ケイと春埼のクラスメイト。時空を超え、声を届ける能力を持つ。

◾野良猫みたいな少女

二年前に死亡。

 

 

 

🔘あらすじ

思い出に浸って生きる男・佐々野は写真の中に入る能力を持っていたが、赤い目をした女の子によってその力を封じられていた。ケイは彼が持つ写真に、かつて自身の失敗で死なせてしまった少女が写り込んでいるのを発見する。少女との再会のために、佐々野の能力を取り戻そうとするケイ。だが彼と春埼の前に「魔女」を名乗る女性が現れたとき、偶然に思えたすべてが意味を持ち始めるのだった。

🐱詳しくは➡『魔女と思い出と赤い目をした女の子/サクラダリセット2』の時間の流れ方のまとめ - 森の踏切番日記

 

 

 

 

🔘感想

🐱今回も、込み入った設定とリセットによる時間の繰り返しで、複雑な展開に仕上がっている。複雑なので二度読みした。

 

🐱今回、問題となるテーマは、アイデンティティの所在の問題だろう。

もしも佐々野の能力で、彼女の目の前に立ったとして、それは彼女に再会したことになるのだろうか。写真の中から彼女を連れ出すことができたとして、それは彼女が生き返ったことになるのだろうか。

このテーマは、クローン技術を扱ったSFなどで、これまでも取り上げられていて、簡単に説明出来る問題ではないが、時間差一卵性双生児と考えるのが妥当かと思う。つまり、遺伝子的には全く同じだが、物理的には全く別の存在である。

「私とまったく同じ世界を持つ人は、存在しないのよ。私の他には」

もし、死んでしまった彼女と、写真の中の彼女が、同じ世界を持っているのなら。

たとえ同じ世界を持っているとしても、同一の存在にはなり得ないのである。

 

🐱もう一つのテーマは、人を愛するということはどういうことかという問題だろう。

魔女は言った。

「貴方は、石に恋することができる?」

これは、もしも自分の好きな人が石に変わってしまったとしても、その石を愛することができるかという意味である。現実的に考えると、事故で植物人間となった恋人を愛し続けることができるかなどの設定が考えられる。

「貴方は石の、どこを好きになるの?」

「それは、過去を。これまでの思い出を」

「私にはもう過去しかなくて、その過去だけを愛しているのかもしれない。それはとても悲しいことだと、私は思うの」

この「魔女」と自称する年配の女性の恋は童話のような恋である。 

 

🐱全然関係ないけれども、サイモン&ガーファンクルの “I Am A Rock” を思い出した。

 I am a rock,

 I am an island.

 And a rock feels no pain;

 And an island never cries.

 

🐱主人公の浅井ケイは、自分を犠牲にしてでも、出来る限り他者を傷つけまいと努力する、いかにも青春小説の主人公らしい少年である。続編は既に購入してあるので引き続き読みたいと思う。

 

 

🐱最後に、月の描写についてなのだが、夜の遅い時間に、

視線を上げると、空の高い位置に、欠けて細くなった月がある。新月へと近づいていく月だ。

翌日の午後八時四十五分頃には、

東の空には細い月が昇っていた。日ごとに欠けて、新月へと向かう月だった。

これだけは、どうしても気に入らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

📄関連日記

🐱『猫と幽霊と日曜日の革命/サクラダリセット1』時間の流れのまとめ - 森の踏切番日記 

 

🔘『少年と少女と正しさを巡る物語/サクラダリセット7』あらすじと感想(1) - 森の踏切番日記
🔘『少年と少女と正しさを巡る物語/サクラダリセット7』あらすじと感想(2) - 森の踏切番日記

 

 

 

 

 

📄関連図書

🐱アイデンティティの所在の問題ということから、この小説を思い出した。

 

スリープ (ハルキ文庫)

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😺★★★★

テレビ番組の人気リポーター羽鳥亜里沙は、中学卒業を間近にした二月、冷凍睡眠装置の研究をする〈未来科学研究所〉を取材するために、つくば市に向かうことになった。撮影の休憩中に、ふと悪戯心から立ち入り禁止の地下五階に迷い込んだ亜里沙は、見てはいけないものを見てしまうのだが……

😺SFミステリの傑作と云えるでしょう。