森の踏切番日記

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井伊直虎関連本を読む(1)

2月の読書録06ーーーーーーー

 井伊直虎徳川家康

 中江克己

 青春文庫(2016/11/20)

 1702-06★★☆

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🐱大河ドラマ『おんな城主直虎』を見続けるかどうか、当初は決めてなかったので、直虎関連本をここまで何も読まずにドラマを見ていたのだが、そろそろ桶狭間の戦いも始まるので、取り敢えず一冊読んでみた。歴史関係の本は同じテーマのものを複数冊読み比べることにしているので、まずは一冊目である。

 

🐱本書を選んだのは本が薄かったからである。取り敢えず基本的な情報を確認できればよいので何でも良かったのである。

 

🐱著者の肩書きは、歴史作家ということになっている。編集者出身らしい。文献資料をよく読み込んでいるようである。歴史観は標準的かつ平均的な印象。ただし、記述には多分に主観が混じっているので注意が必要である。

 

🐱直虎の生涯だけでは、とてもじゃないが一冊の本にはならないので各書いろいろ工夫しているようだが、本書は徳川家康と絡めている。『おんな城主直虎』では瀬名に注目しているので丁度良いと思ったのだが、だいたいは既知の内容だった。

 

🐱新野左馬助奥山朝利中野直由などの脇役陣の役割や井伊家との関係は参考になった。ドラマを見るときは、脇役陣の名前や役割はあまり気にせずに見ていたのだ。

 

🐱後半はほとんど直政物語になっている。こちらも、だいたいは既知の内容だったが、忘れていたこともあるので確認には良かったと思う。

 

🐱井伊直虎が、大河ドラマで取り上げるのに相応しい人物かどうかは、やはり疑問に思う。直虎が、もう少し長生きしていれば良かったのにと思う。

 


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🐱直虎の誕生年は諸説あるが本書では、天文3年(1534)としている。ドラマの方もこの説を採用しているようだ。井伊直親小野政次の生年は、ドラマでは直虎と同じか少し上のように描かれているようだが、直親は二つ年下、政次は六つ年上としている。

 

🐱直虎の出家について巻末の年表では、天文23年(1554)としているが、本文には異なる記述もあり混乱が見られる。他に今川と信長を取り違えている箇所がある。

 

🐱瀬名の誕生年は天文11年(1542)としているが、実際は不詳であろう。天文11年12月26日生まれの家康よりも瀬名の方が年上なのは間違いのないところだろう。ドラマではちょっと年上に設定しているようだ。

 

 
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🐱ここまで『おんな城主直虎』を見てきて最も気になったのは、小野政直・政次父子のことである。

 

🐱天文13年(1544)、井伊直満・直義が家老小野政直の讒言により、今川義元に殺害された。また、直満の子でおとわ(直虎)の許嫁だった亀之丞(直親)も命を狙われ、信州伊那谷の松源寺へ落ちのびた。

 

🐱これは、『寛政重修諸家譜』を典拠としているようだ。政直の目的は、自分の息子の鶴丸(政次)をおとわの婿にして井伊家を乗っ取る事だったとされる。本書では、小野政直は悪家老として描かれているが、そこに引っ掛かりを覚える。

 

🐱『寛政重修諸家譜』の記述は、江戸時代に井伊家によって書かれたものだろうから、井伊家の観点と江戸時代の価値観で書かれていると思われる。戦国時代と江戸時代では価値観が全く異なるし、小野政直を単純に悪家老と決めつけてしまってよいものだろうか。戦国時代においては内通とか讒言などはよくある話であるし、本当のところは分からない。小野にも一分の理があると思う。

 

🐱ドラマでも同じような流れだったが、小野政直をはっきり悪とは描いていなかったように思う。含みのある描き方だったように感じた。それが分かりにくい印象を与えたかも知れない。

 


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🐱本書では、直虎の出家の理由を政次との婚姻を拒否してのこととしている。ドラマでは、おとわの亀之丞に対する幼い恋心として描かれている。鶴丸との婚姻を拒否するというよりも亀之丞との約束を果たすためという意味合いが強かったと思う。そのため、あまり深く考えずに出家したという感じである。おとわにとって鶴丸は頼りになるが単なる幼なじみに過ぎないのだろう。おとわからすれば亀之丞は同族であり鶴丸は家臣の子に過ぎないという事だろう。

 


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🐱小野政次は複雑な性格である。子供時代は、子供らしい正義感で父親のやり方に批判的だった彼がいつ変化したのか。鶴丸は、おとわに恋心を抱いていたが、それがかなわぬ恋だと知っていた。鶴丸とおとわの関係は、亀之丞の帰還までは変化が無かったものと思われる。鶴丸にとっては幸せな時代だったかも知れない。政直の死が亀之丞帰還の契機となったのは皮肉なことである。政次(鶴丸)は、亀之丞が帰還したことで明らかに変化する。彼のダークな部分が呼び覚まされたという感じだ。

 

🐱本書では、政次は単なる悪家老2代目としてしか描かれていない。恐らく情報が少ないのであろうが、わずかな文献資料からだけでは生身の人間の心情を読み解くことはほとんど不可能である。彼がどういう人間であったかは分からない。

 

🐱ドラマにおいては、目付の仕事をそつなくこなしているという印象である。井伊家から見れば、「今川にばかり尻尾を振りおって」という事になるが仕方ないだろう。

 

🐱ドラマ第6回で、政次と直親の間に早くも確執が芽生え始めた感がある。第7回でその確執が広がった感がある。これは、一方的に政次の方が亀裂を深めている印象である。直親の存在が政次を落ち着かなくさせているという感じである。この先悲劇が訪れることは分かっているのだが、それをどのように描くのか楽しみである。

 


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🐱戦国時代の国衆について、近年研究が進んで新たな知見がいろいろ出てきているという。真田氏も井伊氏も国衆なのだが2年続けて国衆が大河ドラマの主役になるというのも、そういった流れを受けてのことかも知れない。

 

🐱南北朝時代には南朝方だった井伊氏は、中世的な古いタイプの国人衆という印象である。今川氏は由緒ある足利氏系であり北朝方であったが、戦国大名に転身を遂げることに成功している。『おんな城主直虎』は、中世から近世への過渡期において、近世的な秩序へと向かう今川氏と中世的な秩序を守ろうとする井伊氏の攻防という側面がある。小野氏が時代の変化に敏感だったのに対して、井伊氏は時代の変化について行けなかったということだと思う。

 


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🐱徳川家康井伊直政を特別に引き立てたのは、直親の死について家康も関係していたこともあったかも知れないが、瀬名との血縁が大きかったのではないだろうか。家康にとって瀬名の殺害は不本意なことだっただろう。瀬名は井伊直平の孫にあたるから、その血縁の直政をことさら引き立てたとしても不思議ではない。それが無ければ、井伊氏は古いタイプの国人衆として歴史から消えていったことだろう。🐥

 

 

 

 

井伊直虎と徳川家康 (青春文庫)

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