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森の踏切番日記

人生LARKしたい

『少年と少女と正しさを巡る物語/サクラダリセット7』あらすじと感想(1)

4月の読書録02ーーーーーーー

 少年と少女と正しさを巡る物語

 サクラダリセット

 河野裕

 角川文庫(2017/03/25:2012)

 1704-02★★★☆

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🐱本書は、2012年4月に角川スニーカー文庫より刊行された『サクラダリセット7 Boy, Girl and the Story of SAGRADA』を修正し、改題したものである。

🐱本書の「新装版あとがき」によると、「ストーリーを変えない範囲で、細かい文章表現はすべて現在の私の好みに揃える」という修正がなされたようだ。巻末の解説によると「若書きの文体や構成を整え」たというが、ラノベ向きの文体を一般向きの文体に変えたということになるだろうか。角川スニーカー文庫版は読んでいないので、その辺りは分からない。

🐱一般的に、作家が初期の作品を手直しする場合、敢えて未熟な部分を残すことがあると思うのだが、本シリーズでは第3巻から文章が断然良くなった印象があるので、やはり、作品の本質に関わる部分はそれ程手直ししていないのではないかとも思う。

🐱もう一つ大きな修正点として、サブタイトルが英語から日本語に変更されたことがあるが、本書のタイトルに「正しさを巡る物語」と主題がはっきり示されたのは、分かりやすくなって良かったと思う。

🐱本書は、単なる「能力者」の物語というだけでなく、色んな要素を含んでいると思う。二度読みしたのだけれども、なかなか深い作品で、それらの一つ一つについて書いていくと大変そうなので、ここでは、あらすじを紹介しながら、思い付いたことを記していくだけに留めたいと思う。

 


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🙀その前に前作『少年と少女と、 サクラダリセット6』を簡単に振り返っておいた方がよいでしょう。

 

10月22日(日)

午後1時 学園祭。浅井ケイは、クラスの出し物の演劇の合間に、村瀬陽香とともに体育館で催される中野智樹バンドのライブを見学する。その後、春埼美空を南校舎の屋上に呼び出し、彼なりに告白する。

──君が、上手く笑えますように。

午後6時20分 学園祭の閉会式が終わり、ケイは春埼とともに下校する。

午後7時 セーブ

今日一日をリセットすることなんてできないから、当たり前にそうした。

春埼が自宅に戻り、ケイが歩き出すと、相麻菫の声が届く。

──貴方にいくつか、お願いがあるの。

午後7時15分 相麻菫

──どうやら、まだリセットしていないみたいね。

午後7時30分 相麻は喫茶店「スモールフォレスト」で、約束していた浦地正宗と会う。索引さんが同席。加賀谷も店内にいた。

 

10月23日(月)

午前9時 ケイは春埼とともに学校をサボって、相麻の指示通りにとある交差点でゴミ拾いをする。その交差点で交通事故が起きたが、能力が使われた可能性があるので、ケイは津島信太郎に連絡をする。津島は、浦地正宗、索引さん、相麻菫と車に同乗していた。ケイたちが春埼の自宅まで戻ると、再びケイに相麻の声が届き次の指示を受ける。

午後2時15分 ケイに中野智樹から電話。皆実未来から相麻の事を訊かれた件と相麻を目撃した件。

午後3時 ケイと春埼は、相麻の指示通りにとあるスーパーマーケットでカレーの材料を買う。そこで宇川沙々音と出会った後、店内で能力暴発による異変が起きる。

午後4時 ケイ帰宅。非通知くんより電話。相麻菫の件。

午後5時 非通知くんより再び電話。相麻菫の件。ケイは相麻菫の意図に気づき呆然とする。

「君は、そんなことのために、死んだのか?」

その時、相麻から声が届く。

 

10月24日(火)

午前9時 ケイは、相麻の指示通り春埼の家の郵便受けに一冊の文庫本を突っ込む。

文庫本に意味はない。だが、春埼美空は、この文庫本を受け取る必要がある。

その後、病院に向かいミチルの夢の世界で情報収集しようとしたが、既に浦地正宗の手が回っていて空振りに終わる。浦地の意図を読み取ったケイは、降り始めた雨の中、野ノ尾盛夏や村瀬に協力を頼み宇川を探す。

午後1時 野ノ尾から連絡を受け、宇川の居場所に向かったケイは3度目の能力による暴発事故を目撃する。ケイが宇川のもとに辿り着く前に宇川は津島の説得に応じ、意図的に能力を暴発させる。雨雲を跡形もなく消し去ったのだ。危険な能力の暴発を理由に、管理局が咲良田中の能力を消し去る決定を下す。それが、浦地正宗の計画だった。

「お前は、間に合わなかったんだよ」

午後1時30分 ひとり帰り道を歩いていたケイに相麻から声が届く。ワンルームマンションまでたどり着いたとき、索引さんと浦地正宗が現れる。彼らは佐々野宏幸の写真を回収しに来たのだ。相麻菫の写真は既に破っておいたので、ケイの手元には魔女の写真しか残っていなかった。ケイは4年前に浦地と出会っていた。

午後4時 春埼とメールのやり取りをしていたケイの部屋に約束通り相麻がやって来る。相麻はチキンカレーを作りながら、浦地正宗について物語る。その後、相麻はシャワーを浴びると言ってバスルームに消える。ケイは扉越しに相麻菫の計画について相麻と語り合う。相麻はバスルームの中で涙を流す。

「ずっと、貴方の幸せだけを、祈っているわ」

一方その頃、ケイからメールが返ってこないことで不安に襲われていた春埼の元に笑みを張りつけた管理局員・浦地正宗と岡絵里が訪れる。浦地は自身の能力を使って春埼の時間を2年7ヵ月巻き戻す。春埼はケイと出会う前の状態に戻ってしまう。岡絵里は浦地から春埼に能力の使い方を忘れさせるように指示される。事前にケイからメッセージが届いていた岡絵里は、その指示を無視することにする。

「まったく、先輩はずるいね」

午後5時30分 ケイと相麻、チキンカレーを食べる。ケイは相麻から様々な話を聞く。

「僕は、能力を守ることにするよ。君の言葉を借りるなら、咲良田の能力のすべてを、支配しようと思う」

「支配して。全部、思い通りに利用して。咲良田の能力がただの幸福な奇跡になることを目指すのよ」

「貴方なら上手くできるわ。だって、私の主人公なんだから」

午後6時05分 相麻、ケイの部屋を出る。

「それじゃあ、さようなら」

ケイは、首を振る。

その言葉じゃ、だめだ。

午後6時17分 咲良田に雨が降り始める。それは、宇川の能力が効果を失ったことを意味する。咲良田から能力に関する情報が奪われたのだ。人々は偽の記憶を植えつけられ能力は無かったことにされたのだった。浦地正宗の計画「サクラダリセット」は成功した。

浅井ケイだけは、雨音の意味を正確に理解していた。

浅井ケイは、雨の中を走り出す。

 

 

🐱ここまでが、『少年と少女と、 サクラダリセット6』で描かれた内容でした。

 

🐱引き続き、『少年と少女と、正しさを巡る物語  サクラダリセット7』についても、時系列に沿ってあらすじを紹介していきながら感想を挿んでいこうと思います。

 

 

サクラダリセット7 BOY, GIRL and the STORY of SAGRADA<サクラダリセット> (角川スニーカー文庫)

能力の存在を忘れ去るよう、記憶の改変が行われた咲良田。そこにいたのは浅井ケイを知らない春埼美空と、自身の死を忘れた相麻菫だった。だが相麻の計画により、ケイはもう一度「リセット」する術を手にしていた。より正しい未来のために、ケイは、自分自身の理想を捨て去らないがゆえに能力を否定する、管理局員・浦地正宗との最後の「交渉」に臨む。昨日を忘れない少年が明日を祈り続ける物語、シリーズ感動のフィナーレ!

 

 

10月25日(水)

午前7時30分 浅井ケイ起床。彼だけが本物の記憶と偽物の記憶の両方を持つ。

──問題の本質は、浦地さんの計画なんかじゃないんだ。

登校すると、教室には春埼の席に相麻菫が座っていた。能力を忘れて普通の女の子になった相麻にケイは戸惑う。

今の相麻は、まるで相麻菫に見えない。

彼女そっくりに作られただけの、偽物みたいだ。

 

🐱自分の属する世界とよく似た別の世界に迷い込むパターンの小説は色々あるが、本シリーズの場合、相麻菫もまた普通に女の子なのだということを主人公と読者に気付かせる点が重要だと思う。能力を持つ相麻菫の孤独を際立たせる効果的な展開だと思った。

🐱ちょっとだけ、引退した浅田真央ちゃんを連想した。引退するということも能力を忘れることに近いのかなと思った。

 

昼休み ケイは相麻と南校舎の屋上で相麻が作った弁当を一緒に食べる。

「だから、いつまでも、ここにいるわけにはいかない」

「つまり私は、ふられたということかしら」

 

午後1時30分 学校を抜け出したケイはバスに乗って駅へ向かう。電車に乗ったケイは生まれた街を4年振りに訪れる。そこは、ケイが捨てた街であり、ケイを忘れた街である。両親の住むマンションの前の公園でケイは、幼女を連れた母親と再会する。

 

午後5時30分 ケイは春埼の家を訪ねる。前日春埼に届けた文庫本から満開の桜の木が写った写真を取り出す。

「ひとりの女の子が、なにもかもすべてを捨てて、僕にプレゼントをくれたんだ」

ケイは春埼を連れ出す。

 

🐱『サクラダリセット2』でケイは、佐々野宏幸の写真を3枚手に入れている。魔女の写った写真は、8月9日に一度使われたが、リセットしたので復活している。この写真は10月24日に浦地が回収した。

🐱相麻菫の写った写真は、8月30日に相麻を「再生」させるために使われたが、リセットしたので復活している。この写真は用済みなので10月23日の夜にケイ自身が破り捨てている。

🐱残る一枚、佐々野の家の庭の満開の桜の木が写った写真は、8月12日に一度使われたが、やはりリセットしたので復活している。この写真を利用したのだ。この複雑で緻密な構成には感嘆する。

 

午後7時前 佐々野の写真は、写真を写した場所でないと効果がないので、ケイは春埼を佐々野の家の庭に連れて行き、そこで写真を破る。写真の効果で再現された過去の庭の中で春埼はリセット能力の使い方を思い出す。

視界がぼやける。温かなものが頰を流れる。

「春埼。リセットだ」

 

🐱浅井ケイと出会う以前の春埼美空は、泣いている人をみつけたとき、能力を使う。「泣くのが苦手」なケイは、この日一日、相麻菫を振り、母親と再会し、胸に涙を溜めていたのだ。

🐱彼は、何でも我慢する性格なので泣くのが苦手なのだろう。それでも、涙のきっかけは、失われた春埼美空の笑顔を取り戻したいという強い願いだったと思う。この小説は純愛小説でもあるのだ。

🐱相麻のケイに対する想いも純粋なものだし、春埼のケイに対する想いも純粋なものだし、純愛の三角関係という構図になっているところが面白いと思う。相麻と春埼の互いに対する感情も素直だと思う。

🐱ケイの相麻に対する気持ちは恋愛にはなり得ない。相麻はその事を理解しながらもケイのために命を捨てたのだ。ケイの理想の美しさに殉じたとも云えるか。相麻は、生まれるときに一度死にかけたことから、生に対する執着が希薄なのかも知れない。

🐱一般的に、十代の頃は、死から遠い存在であるが故に死ぬことに現実感を持てずに、簡単に死を受け入れてしまえるということもあると思う。そういうタイプの子は確かにいると思う。

 

🐱リセットによって、2回目の10月22日(日)の午後7時が訪れる訳だが、ここで重要なのは、佐々野の3枚の写真がまた復活して使えるようになるということである。

 

 

🙀思ったより長くなりそうだし、時間がかかりすぎてしまった。この記事はここまでにしよう。この後も時系列に沿って、あらすじを紹介していきます。🐥

 

 

 

📄この記事の続き

🔘『少年と少女と正しさを巡る物語/サクラダリセット7』あらすじと感想(2) - 森の踏切番日記

 

 

 

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