森の踏切番日記

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もっと知りたい伊藤若冲

7月の読書録02ーーーーーーー

 もっと知りたい 伊藤若冲 生涯と作品

 佐藤康宏

 東京美術(2011/07/30:改訂版)

 ★★★☆

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もっと知りたい伊藤若冲―生涯と作品 改訂版 (アート・ビギナーズ・コレクション)

 

去年、ピンタレストPinterest)で伊藤若冲の作品の画像を集め始めてからおよそ一年が経ち、代表的な作品は『乗興舟』と『玄圃瑤華』以外は大体保存したと思う。

 

ところが、最初に『動植綵絵』を全て保存してからは、目についた順に作品画像を保存していった結果、まとまりがないことになってしまった。

 

例えば、屏風絵については、画像が小さくなるので各扇ごとに画像を保存しているのだが、それがバラバラになっていたりするのだ。

 

『鳥獣花木図屏風』や『樹下鳥獣図屏風』も画像が小さくなるので部分に分けて保存するのだが見栄えがよくない。

 

『乗興舟』と『玄圃瑤華』をまだ保存していないのも、できればまとめて保存したいからである。『菜蟲譜』はまとめて保存することが出来たのだが。

 

編集して画像をまとめたいと思うのだが、ピンタレストは編集機能や検索機能がお粗末で画像を並べ替えたり観賞したりするにはあまり向いていないように思う。作品を見やすいように並べ替えるには新たにボードを作った方が手っ取り早いようだ。

 

どのように作り直すか。『動植綵絵』を中心に好きな作品をセレクトするか。軸と屏風と版画と障壁画その他に分けるか。色彩画と水墨画その他に分けるか。年代順に初期中期後期と分けるか。悩ましいところである。

 


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乗興舟(部分)

明和4年(1767) 一巻 紙本拓版

縦28.7×長さ1151.8cmの一部

 


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『玄圃瑤華』のうち「冬葵」

明和5年(1768) 一帖(四十八図)のうち一図

紙本拓版 縦28.2×横17.8cm

 

 

 

そこで考えをまとめるために、おさらいも兼ねて、東京美術の美術初心者向け「もっと知りたい」シリーズの一冊である本書を読んでみた。去年は、狩野博幸若冲入門書を読んだので、本書の著者と若冲作品の鑑賞の仕方の違いを読み比べるのも興味深い。

 

本書は、伊藤若冲の生涯と同時代の出来事が年表になっていて、商人時代、画家人生初期、動植綵絵時代、天明の大火まで、晩年の各時代ごとに若冲の人生と代表作品が解説されている。特に、動植綵絵時代が詳しい。また、大典や売茶翁など若冲を取り巻く人々や曾我蕭白円山応挙など同時代の画家にも触れている。図版も豊富で初心者には分かりやすい内容である。『動植綵絵』については、三十幅全ての図版が掲載されている。

 

そういえば、澤田瞳子の『若冲』を買ったきりで、まだ読んでなかった。そろそろ読まなくては。

 

動植綵絵』の裏彩色の技法には目を見張った。裏彩色は絹に描かれた絵の裏から彩色するという東洋絵画の古い技法で、日本では古代・中世の仏画などに多くの例があるそうだ。若冲はこの手のかかる技法を『動植綵絵』で多用しているという。

 


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動植綵絵』より「雪中鴛鴦図」

宝暦9年(1759) 三十幅のうち一幅

絹本著色 縦141.8×横79.0cm

※裏彩色の技法が使われている。

 

 

 

江戸時代の多くの画家と同様に若冲も複数の弟子を動員して工房制作を行った。特に晩年の水墨画では、若冲の印がありながら実際には弟子が描いたものがある。これは知っていた。

 

弟子の名前がまた若演とか環冲とか紛らわしい名前である。宝蔵寺のホームページで若冲の鶏を模写したような弟子の作品を見たことがある。若冲の弟の白歳(青物問屋だけにハクサイ)が若冲の羅漢図を模写した作品もある。

 

本書で著者は、静岡県立美術館の『樹下鳥獣図屏風』やプライス・コレクションの『鳥獣花木図屏風』は若冲の実作ではなくて弟子が描いたものだと主張している。前者は、「若冲の下絵をもとに弟子たちが彩色したと考えられる」という。後者について著者は、「絶対に若冲その人の作ではない」と断言している。著者に言わせると「稚拙な模倣作」であると辛辣である。

 

去年、伊藤若冲については色々調べたのだが、これについてはWikipediaの〈伊藤若冲〉の項に著者・佐藤康宏と辻惟雄との論争が紹介されているので知っていた。正直言って、素人にはよく分からない話である。私的には、この二作品はあまり好きではない。

 


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『樹下鳥獣図屏風』左隻


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『樹下鳥獣図屏風』右隻


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『鳥獣花木図屏風』左隻


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『鳥獣花木図屏風』右隻

 

 

 

ショックだったのは、お気に入りだった福岡市博物館の『付喪神図』も著者に言わせると模本だということだ。これは知らなかった。「おそらく若冲の原本が存在したことを想像させるだけのユニークな造形」を見せているが、「描写が弱々しく、署名も印も若冲の真正のものではない」のだそうだ。本当だろうか?

 

言われてみると確かに作品としては劣るような気もしてくるが、造形も構図も面白いし描写の弱々しさがこの世のものではない感じを表現しているようにも思う。付喪神を描いた妖怪画としては他にはないユニークな作品だと思うし、やはり、これはこれで悪くはない。

 


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付喪神図』 一幅 紙本墨画 19世紀

 

 

 

ピンタレスト若冲作品を渉猟していると、偽若冲作品に出くわすことがある。これは弟子の作品ではなくて、他の画家の作品が若冲作になっていることがあるのだ。谷鵬の虎図や渡辺南岳の岩上猿猴図などが伊藤若冲作になっていたりする。

 

これは、プライス・コレクションの「若冲と江戸絵画展」の図版には若冲以外の作品にも「若冲と江戸絵画展」と書かれていて、誤解している人がいるのが一因のようだ。「若冲琳派展」という作品展も同様で、琳派の作品なのに若冲作となっていたりする。本書にも若冲が(日常的に周囲に尾形光琳の作品があったことから)光琳の意匠から着想を得た作品もあるという解説があるが、若冲作品かどうかは、画風や署名・落款を見れば分かるだろうにと思う。

 

プライス・コレクションの虎図を全て若冲作品として紹介している英語のサイトがあり、これも誤解の一因となっているようだ。片山楊谷の虎図が伊藤若冲作として人気を集めていたりする。他にも、長澤芦雪や中原南天棒の作品などが若冲作になっていることがある。外国人には南天棒が人の名前だと分からないらしい。こうやって間違った情報が拡散していくのだなあと実感した。

 


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ピンタレスト伊藤若冲の作品として人気を集めている「猛虎図」。どう考えても伊藤若冲が描きそうにない虎である。楊谷と署名もあるし、毛の描き方から見ても片山楊谷だと思うのだが。外国人には分からないか。

 

 

 

かくいう私も、相国寺(しょうこくじ)をうっかり〈Sokokuji temple〉と表記してしまい、面倒なので訂正していない。こうやって間違った情報が拡散していくのだなあ。訂正しなくては。

 

ともかく、偽若冲作品を保存している「伊藤若冲」とタイトルされたボードはあまり信用しないことにしている。にわかファンの半可通が多いようだ。私も素人の半可通だから気を付けねばと自戒している。そんなこともあって、今回、若冲基礎知識をおさらい出来てよかったと思う。

 

 

 

もっと知りたい伊藤若冲―生涯と作品 改訂版 (アート・ビギナーズ・コレクション)

もっと知りたい伊藤若冲―生涯と作品 改訂版 (アート・ビギナーズ・コレクション)

 

 

 

 

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