森の踏切番日記

人生LARKしたい

作者にまったく共感できない小説の感想は書けないものだ

8月の読書録04ーーーーーーー

 若冲

 澤田瞳子

 文春文庫(2017/04/10:2015)

 ★★☆

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伊藤若冲『仙人掌群鶏図』西福寺

 

 

私が初めて若冲の作品を知ったのは、小学生の時だった。切手の鶏の絵を見て、むっちゃカッコええなあと思い、強く印象に残ったのであった。その後、世間で伊藤若冲ブームが起こり、あの時の鶏は若冲だったのかと思い出した。

 

昨年は、伊藤若冲生誕三百年ということで、若冲関連の催しでいろいろ盛り上がったが、私もピンタレストPinterest)で若冲の作品の画像を集め、この一年で数百点の作品の画像を保存した。有名な作品は、ほとんど全て網羅できたと思う。また、若冲に関して色々調べたり、若冲関連の書籍を読んだりもした。従って、ある程度の知識と、自分なりに作り上げた若冲像があって、本書を読むことができた。

 

伊藤若冲が妻帯者だったという記録は残されていない。生涯独身を通したものと思われている。しかしながら、父親の死によって23歳の若さで四代桝屋源左衛門を継いだ若冲に縁談話が何度もあったであろうことは想像に難くない。先代の未亡人である若冲の母親は、さぞかし気を揉んだことであろう。それでも妻帯しなかったということは、早くから弟に家督を譲り隠居しようと決めていたのだろうと考えることも出来る。当時、40歳での隠居は、異例に早いということはないという。若冲は出家を希望していたのではないかと思わせる形跡もある。

 

しかし、実は結婚の経験があったのではないか、記録に残せない事情でもあったのではないかと、想像をたくましくすることはできる。本書の作者もその様なことを考えたのだろうか、本書では若冲に妻がいたという設定になっている。そして、その妻は姑によるいびりと絵を描いてばかりの夫の無関心とから自殺をしたということになっている。さらに、若冲が妻を見殺しにしたと思い込んでいる義弟との確執により対立の構造を作り出している。この義弟は若冲の贋作を描く絵師になるのだが、読み進めていくと、若冲の鏡像的な分身であることが分かる。

 

本書を楽しめるかどうかは、この設定に乗れるか否かにかかっていると思うが、私は乗れなかった。こういった構造に面白さを感じないし、若冲の真実なり、若冲の作品の真実なりが描き出されているとは思われず、作者にまったく共感できなかった。本書は、作者が若冲の作品から着想を得て、歴史上の若冲とは似て非なる虚構の絵師の物語を書いたものに過ぎず、歴史上の若冲を描き出したものではないと解している。それで面白い話になったかというと、そうは思われず、私にはつまらない小説だった。

 

 


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小学生のとき、カッコええなあと思った鶏はこれだった。西福寺の仙人掌群鶏図の鶏だった。

引用元:Red Junglefowl stamps - mainly images - gallery format

 

 

 

以下、具体的に感想を書こうと思ったのだが、気が乗らないまま一週間過ぎてしまった。読んでつまらなかった本の感想に時間をかけるくらいなら、別の本を読んだ方が有意義かとも思われる。世間の評価はどうだか知らないが、私には縁のない小説だったということで、ここで打ち切ることにする。

 

伊藤若冲については、禅宗との関係が重要だと思う。本書では、その部分についてほとんど触れられていないのが最大の不満。