森の踏切番日記

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池谷裕二『記憶力を強くする』再読(1)海馬は記憶のための特殊装置

9月の読書録03ーーーーーーー

 記憶力を強くする

 池谷裕二

 講談社ブルーバックス(2001/01/20)

 ★★★★

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人工知能はいかにして強くなるのか?』(小野田博一著・講談社ブルーバックス)で、人間の「学習」と人工知能の「機械学習」との違いについて読んだのは、八月のことでした。そのとき、本書のことを思い出したので再読してみました。人間の場合は、「学習」と「記憶」とは不可分の関係にあるからです。

本書が刊行されたのは16年前になります。この16年間でこの分野もずいぶん進歩しただろうと思いますが、素人が基礎知識を確認するだけなので、これで十分だろうと思います。

今では、よく知られている話題も多いですが、復習の意味をこめて、印象に残った箇所をメモしておこうと思います。

 


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💡記憶力を強くする💡

 

鍛えた分だけ記憶力がつく?

脳にある神経細胞は増殖しません。そして、死んでしまった神経細胞は二度と復活しません。

つまり、年をとるほど神経細胞は少なくなります。

あなたの頭の中では、毎日、数万個の神経細胞が死んでいます。

使われていない神経細胞からリストラされていくのです。

 

最近では、よく知られるようになりましたが、

頭を強く打ったりすると、大量の神経細胞が死んでしまいます。
だから、

子供の頭を叩いてはいけない!

強く揺さぶってもいけません。

アホな子がよけいにアホになります。

 

アルコールも神経細胞の死を早めます。

睡眠薬覚醒剤などの薬物も、当然神経細胞を殺します。

血管がつまっても、神経細胞は死んでしまいます。

 

ところが、脳の中でも「海馬」だけは、年齢に関係なく神経細胞が増殖することもあります。

しかも、脳を使えば使うほど海馬の神経細胞は増えていきます。

脳を鍛えることで記憶を司る神経細胞を増やすことができるのです!

つまり、

鍛えさえすれば記憶力は向上するけれども、鍛えなければ記憶力は強化されない!

年齢は関係ありません。

 


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Right Hemisphere:右半球(右脳)

Hippocampus:海馬

※Hippocampusは、タツノオトシゴの学名でもあります。形が似ているから?

タツノオトシゴは英語では sea horse.

海馬は漢語です。 

 

 

短期記憶と長期記憶

記憶には、「短期記憶」と「長期記憶」があります。

一度に記憶できる個数が限られているのが短期記憶の大きな特徴です。

人間が瞬間的に把握して記憶できる対象の数は、せいぜい7個程度です。

例えば、10桁の数字を覚える場合、三つ程度のグループに分けて覚える方が覚えやすいです。これを「チャンク化」というそうです。

 

例えば、6482571903 という数字を覚える場合、このまま覚えてしまう人は、あまりいません。ほとんどの人は、

 64-8257-1903 

あるいは、

 648-257-1903

と区切って、グループに分けて覚えると思います。こうすると短期記憶の容量内に収まるからです。

 64-825-71-903

と四つに分けると覚えにくくなります。

 

長期記憶には、過去の自己の経験や出来事に関連した「エピソード記憶」(思い出)と抽象的な「意味記憶」(知識)があります。

短期記憶とエピソード記憶は意識的に思い出すことができますが、意味記憶は自我(意識)が介入しない「潜在記憶」なので、思い出すには「きっかけ」が必要です。

 

長期記憶には他に、体で覚える物事の手順に関する「手続き記憶」と「プライミング記憶」というものがあります。これらも潜在記憶です。

ライミングとは、先行する事象(過去の経験)が後続する事象(その後の経験)に影響を与える現象だと、私は理解しています。

 

突然で恐縮ですが、

ヒラヤマと10回声に出して言ってみてください。

 


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クイズです。
世界でいちばん高い山は? 

 


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このよく知られた遊び(10回クイズ)がプライミングの分かりやすい例として挙げられるようです。

高校時代のことですが、クラスの女子に10回クイズをしたことがあります。

「ピザって、10回言うてみ?」

「ピザ、ピザ、ピザ、ピザ、ピザ、ピザ、ピザ、ピザ、ピザ、ピザ」

「ほな、この腕の曲がってるとこは?」

 

 

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「ヒザ」

「ア~ホ~、ここは、ヒジじゃ、ボ~ケ~」

「うわぁ~! ムッチャむかつくぅ~!」 

以上、エピソード記憶でした。

彼女は、本当に悔しかったようで、この事を後々まで覚えておりました。おかげで、私もこうやって、覚えております。

勘違いも記憶のうち。思い過ごしも恋のうち

ちなみに、先程のクイズの答えは、もちろんエベレスト(チョモランマ)ですね。

ヒマラヤちゃうで。

 


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「プライミング」は、情報の圧縮に役立っています。勘違いさせるためにあるわけではありません。

 

 

海馬の重要性

海馬の神経細胞は、脳内に大量に入ってくるさまざまな情報を取捨選択する記憶の管理人としての役割を果たしています。 

海馬は「エピソード記憶」と「意味記憶」に深く関係しています。

海馬は「記憶するとき」には重要ですが、「思い出すとき」には必要ではありません。記憶は海馬の中に保存されるわけではないからです。

記憶の保管場所は「側頭葉」にあります。

 


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左脳。ピンク色の部分が「側頭葉」です。

右脳の同じ箇所にもあります。

橙色が「前頭葉」、青色が「頭頂葉」、緑色が「後頭葉」、赤色は「小脳」、黄色は「脳幹」です。

 

 

大脳に入ってきた情報は、側頭葉を経由して海馬に入ります。情報は、海馬で処理され統合され整理され、記憶すべき情報が、再び側頭葉に戻されます。

海馬に情報が留まるのは、1ヶ月ほどだそうです。

 

海馬がほぼ完全な形になるのは、だいたい2歳から3歳くらいであると考えられています。だから、幼児期の記憶が無いのです。

海馬が完成していない幼児に英才教育を施すことも無意味なことです。

この時期の子供には、愛情をたっぷり注ぎましょう。そうすれば、記憶力のよい子に育つ可能性が高まります。

海馬がより豊かに成熟するそうです。

育児中の母親や妊婦のストレスが子供にとってよくないことは、言うまでもありません。

 

海馬を活性化させるには、

  • 硬いものをしっかり噛んで食べること
  • 他人とよく交際すること
  • 異性と接すること
  • 適度に体を動かすこと
  • 軽いダイエット

が良いという研究結果もあるそうです。

過度の飲酒、心身へのストレス、麻薬などは海馬の働きを低下させます。

(本書が刊行された2001年現在の情報です)

 

海馬は記憶のために特化した脳の中でも特殊な部位なのです。

 

 

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💡次の記事へと続く

🔘池谷裕二『記憶力を強くする』再読(2)脳は曖昧に乱雑に記憶する - 森の踏切番日記

🔘池谷裕二『記憶力を強くする』再読(3)記憶力を鍛えるコツまとめ - 森の踏切番日記