森の踏切番日記

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『デート・ア・ライブ16 狂三リフレイン』のあらすじと感想

10月の読書録04ーーーーーーー

 デート・ア・ライブ16 狂三リフレイン

 橘公司

 ファンタジア文庫(2017/03/20)

 ★★★

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デート・ア・ライブ16 狂三リフレイン (ファンタジア文庫)

〈TOKISAKI Kurumi〉

 

 

今回は、久し振りに時崎狂三がメインキャラクターということで、ストーリーが大きく動くことを期待して読み始めた。

 

 

まず、序章で精霊になる前の狂三について語られる。十七歳の狂三は、あるきっかけで崇宮澪と知り合う。

「崇宮」は五河士道の実妹の崇宮真那と同姓。「澪」はこれまでに話題に出てきた「ミオ」と呼ばれる謎の人物と同じ音。「澪」という漢字も気になるところ。

 

前作は最悪の精霊・時崎狂三が士道たちのクラスに復学したところで終わったが、本章はその続きから始まる。放課後、士道は屋上で狂三と話をしようとするが、強い目眩を覚える。

上空には本気で士道を殺(と)りにきたDEM社のエレンがいたが、真那が迎え撃つ。エレンに20人の〈ニベルコル〉が加勢するが、狂三の分身体が真那に味方する。

我に返った士道は違和感を覚えるが、狂三の提案を聞く。

「──わたくしと士道さん、相手をデレさせた方が勝ち……というのはいかがでして?」

狂三の目的は士道が体内に蓄積した10人分の霊力を士道ごと食らうこと、つまり、士道の死を意味する。

士道の目的は、狂三の霊力を封印して、罪の償いをさせて、その上で狂三に幸せな生活を送ってもらうこと。両者は相容れない。士道は、この勝負を受けて立つことにする。

ここまでの文章に不自然な個所があり、作者が何か仕掛けていることがわかる。どうでもよいことだが、〈ニベルコル〉をうっかり〈ニコルベル〉としてしまいそうになる。

 

その夜、五河家に一同集合して対策を話し合う。二亜と折紙の話から狂三が霊力を狙う目的は、30年前に現れたという始原の精霊をぶっ殺して、その精霊の存在を「なかったこと」にすることだと分かる。狂三の天使〈刻々帝(ザフキエル)〉を使えば時間を越えることができるが、そのためには膨大な霊力が必要なのだ。

真那の話では、彼女がエレンの襲撃を予測できたのは、前夜に狂三から教えられたからだという。分身体を使っての諜報活動が得意な狂三が士道の霊力をDEM社に横取りされたくなかったからだろうという結論になるが、士道はイマイチ納得できない。

この場面は、説明的だが合間にギャグを挟みながら進めて読者を飽きさせない工夫をしている。ただ、二亜が前に出てくるとギャグのセンスがどうもなあ…

 

翌朝から狂三の攻勢が始まる。狂三の大人の色気に守勢気味の士道。女子力の高い士道は昼休みのお弁当攻撃で反撃に転じるが、狂三も意外と女子力が高かった。狂三も士道にお弁当攻撃を仕掛ける。十香、折紙、八舞姉妹が息をのんで見守る中、このお弁当対決は激しい攻防の末、引き分けに終わったのだった。勝負は、次の水曜日、バレンタインデー決戦に持ち越される。

この場面は、作者の筆が乗っていて面白かった。もう少しパロディ的に大げさにやっても良かったと思う。合間に狂三の分身体たちの思わせぶりな会話が入る。

 

その日の夜、精霊マンションの一室で、琴里を議長に精霊オールスターズによる狂三対策会議が開かれる。会議の結果、バレンタインデーには狂三のチョコに対抗して、みんなも士道にチョコを贈ることと、当日までに士道に大人の魅力に対する耐性を付けさせることが決定する。

 

そして、深夜、士道の布団の中には一二九トリオが忍び込んでいた。そのあと士道は、「一応」精霊の〈ニベルコル〉たちに襲撃され惨殺される。という悪夢を見る。階下へ下りると士道を待っていたのは、なぜだか大人に成長した精霊たちのお色気攻勢だった。一二九トリオは抜け駆けしたペナルティで逆に子供になっていた。魔女っ子が一人いると便利だわ。ここのたたみかけ方も良かった。最後のトドメも効果的。大人化した四糸乃が良いなあ。オトナ四糸乃の♡♡♡エプロン💓 嫁にしたいっ! よしのんはいらんけど。

 

数時間後、琴里たちは、士道にトドメを刺した村雨令音とともに、チョコの材料を買いに製菓材料専門店にやってきていた。ここで令音の恋バナが語られる。過去に忘れることができない恋人が一人だけいたそうな。

この場面の「現実は伏線とか展開とか気にせずに襲ってくるしー」という二亜のセリフが意味深。創作には伏線とか憑きものだしー。

そんなところに現れたのが狂三だった。彼女もチョコの材料を揃えに来たのだ。

 

それからおよそ一時間後、精霊マンション一階の厨房スペースには、精霊たちとともに狂三の姿があった。狂三の提案で一緒にチョコ作りをすることになったのだ。なぜだかそういうことになったのだ。製菓材料専門店ではさり気なく琴里をフォローしていた令音が〈フラクシナス〉ってスマホで打つと〈フラグ死なず〉って出てくる!に戻ったことで、琴里に悲劇がっ!

普段は精霊たちにいろいろこの世界のことを教える立場にある琴里だが、なんといってもまだまだ十四歳の女の子、チョコの作り方を知らなかったことに気がついて頭がテンパリング、ドタバタを繰り広げる。ここは七罪がチョコの作り方を知っていて、なんとかチョコ作りが始まる。琴里は、狂三が微笑ましげに見守っているかのような気がしたのだった。

「……まさかね」

 

そして、二月十四日の朝がやってくる。士道は精霊たちからチョコをもらい、狂三の分身体たちは意味深な会話を交わし、あっという間に放課後になり、士道と狂三の決戦(デート)が始まる。

デートコースは、昨年の6月にしたデート(第3巻)と同じコースをたどるものだった。といっても、あの時のデートの相手は実は狂三の分身体だったわけで、真の狂三とは初めてたどるコースということになる。ということでランジェリーショップ・アゲイン。

ここで確認のため第3巻を読み返す。やっぱり第3巻は出来が良いなあ。この小説は「半眼を作る」という表現がやたら出てきて気になるのだが、第3巻でもやはり使われている。表現力の幅が狭くね?

デート開始からおよそ二時間、第3巻の時はせわしないデートだったが、今回は余裕のあるデートでいい感じ。ところが、なぜか狂三は極度のストレス下にあるようだ。

午後十時、二人はあの時と同じルートを巡り「思い出」の公園にたどり着く。そこでチョコを交換する二人。女子力の高い士道もチョコを用意していたのだ。士道はもう士織でいいのではないかと思う。

二人はいい雰囲気になるが、狂三の心に何か大きな壁があって、霊力を封印する状況にはならない。士道は意を決して狂三に始原の精霊を倒そうとしている理由を尋ねる。廃ビルの一室に連れて行かれた士道は、狂三の天使〈刻々帝(ザフキエル)〉の力によって狂三の記憶を追体験する。

 

十七歳の狂三は、「正義の味方」を自称する崇宮澪から、精霊を倒し世界を救ってほしいと頼まれ、精霊の力を与えられた。その日から狂三は澪とともに世界を救うために怪物のような精霊と戦い、倒していった。しかし、ある日狂三は知ってしまった、自分が倒した精霊が実は親友だったことを。そして、これまで倒した精霊も実は全て人間だったことに気づいてしまった。

澪の目的は霊結晶(セフイラ)を精製することにあった。本来の霊結晶は人間の属性とは相容れないものなのだが、人間の身体を何度か通すと精製されるのだ。精製された霊結晶を適性のある人間に与えれば、きちんと自我を持ったまま精霊になれるが、精製される前の霊結晶を与えられた人間は暴走してしまう。それが、狂三が倒した怪物のような精霊だったのだ。狂三は澪に利用されただけだった。

次に気がついたときには、狂三は記憶を失って現界した。狂三は天使〈刻々帝(ザフキエル)〉の力を使って記憶を取り戻し、全てを思い出した。そして決意したのだ。たとえ、どんな犠牲を払ってでも、時間に干渉する力を持つ天使〈刻々帝(ザフキエル)〉を使って、歴史を作り直すことを。

精霊とは、精製された霊結晶によって始原の精霊・澪の力を分け与えられた人間ということになる。ここで、第15巻で反転体の十香が言っていたことの意味がはっきりする。そして、DEM社は霊結晶を元の状態に戻そうとしているということになる。

 

狂三は士道に「士道の命」が欲しいと懇願する。狂三の記憶を追体験してしまった士道の心は揺さぶられる。

「──わたくしの霊力(いのち)以外のすべてを、あなたに、捧げますわ」

一糸纏わぬ姿となった狂三が士道に迫る……

その時、一応精霊の〈ニベルコル〉たちが襲撃してくる。狂三は一撃のもとに「贋作風情」を撃退するが、倒れ込んでしまった。

 

あわてる士道の前に狂三の分身体が姿を現す。彼女が言うには、狂三は疲れ切っているのだという。そこにもう一人、五年前のゴスロリ眼帯の分身体が現れ、驚愕の事実を士道に語る。

士道が狂三と屋上で話した二月九日の放課後、実は士道はDEM社の襲撃でエレン・メイザースの手によって殺されていたのだ。

狂三は炎の精霊・琴里に攻撃され深手を負った際、士道に助けられたことがあった(第4巻)。その時狂三は、影の中に逃げる寸前、お礼代わりに意識を失った士道の唇にキスを残した。狂三はその戦いで天使の文字盤の『Ⅵ』を失ったのだが、それは士道とキスしたことによって霊力の一部を封印されたためだった。

死んでしまった士道に我知らずキスをした狂三は、その霊力を取り戻した。【六の弾(ヴァヴ)】は撃った対象の意識のみを過去の身体に飛ばす弾だった。狂三はその弾を使って二月八日に意識を飛ばし、士道の死を回避したのだ。

以来、この六日間で士道は二〇四回殺されている。その度狂三は【六の弾(ヴァヴ)】を自らに撃ち込み意識を過去に飛ばし、士道の死を回避し続けていたのだ。狂三の精神は限界に近づこうとしていた。

狂三は、すぐに士道を「喰おう」と思えばできたはず。でもそれをしなかったのは、士道にはちゃんと納得してもらった上で「命を借り」たかったのだろう。士道の命を「喰らう」ために士道の命を救うという行為を繰り返すうちに彼女の心境が変化していったということもあるだろう。彼女は本質的には誠実な人柄なのだろうとも思える。彼女は士道に既に心を開いているようだが、デレたというよりも、情が移ったという感じがする。「食べちゃいたいくらい好き」っていうのもありか。

とここで狂三が目を覚まして、士道の前から消えてしまう。士道は、今度は自分が狂三を救う番だと心に誓う。

この場面で「半眼を作りながら」という表現(326頁)は良くない。こういう自動的な記号的な表現は多用すべきではないと思う。特にデリケートな場面では、もっと表現に気を配るべきではないだろうか。

 

とあるビルの屋上で、狂三がおしゃべりな分身体ともめているところに〈ファントム〉が現れる。〈ファントム〉の正体を察した狂三は〈ファントム〉を攻撃する。その攻撃で障壁を剥がされて実体を現した〈ファントム〉の姿は、狂三も士道も琴里もよく知るあの人物だった。その姿を見て全てを理解した狂三は〈ファントム〉を影の中に引きずり込む。

というところで、To Be Continued となる。 

 

 
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前作までで精霊は、十香、四糸乃、狂三、五河琴里、八舞姉妹、美九、七罪、鳶一折紙、二亜、六喰と、一から十まで出そろっている。精霊はこれで打ち止めなのだろうか。スピンオフなどのキャラは分からないが、映画では万由里がいるから「万」は使用済みだとして、この先、「百」とか「千」とか「億」とか「兆」とか「京」などの名を持つ精霊は登場するだろうか。私自身、昔々考えたキャラに「那由多」と名付けた前科があるが、登場するだろうか。

察しのよい読者は、前作までに原始の精霊の名前をある程度予想できたことだろうと思う。「澪」という名前には「零」という字が含まれている。そして、「零」という字には「令」という字が含まれている。精霊の名前が一から十までなのだから、始原の精霊の名前は「零」が関係するだろうと思っていた。「ミオ」が「澪」とは思いつかなかったが、「零」から「令」を連想するのはそれほど難しいことではない。

第4巻の終章で『何か』(ファントム)は、狂三の目的が 三十年前に飛んで始原の精霊を亡き者にすることを聞いて知っている。物語の展開から考えても、このまま狂三にやられてしまうはずもない。第11巻で〈ファントム〉は仮の姿で現れることもできることが分かっているので、「澪」と「令」の関係もこの段階では、はっきりとは言えない。

 

今回は久し振りに満足のいく内容だった。やはり、このシリーズは狂三に尽きる。あとがきによると、狂三は『デート』で最初に出来たキャラクターらしい。作者が高校二年の頃に書いた小説に狂三の原型となるキャラクターが存在しているという。納得のいく話だ。このシリーズのキャラの中では狂三が一番造形がしっかりしているし、キャラが複雑で深みがある。作者にとっても思い入れのあるキャラクターなのだろう。

 

 

この次は、なんだか『リゼロ』が読んでみたくなってきたのだが、どんなもんだろうか。

 

 

 

 

 

 

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