森の踏切番日記

ただのグダグダな日記です/2018年4月からはマイクラ(BE)日記をつけています/スマホでのんびりしたサバイバル生活をしています/面倒くさいことは基本しませんw

『ヒア・カムズ・ザ・サン 東京バンドワゴン』をようやく読んだ

12月の読書録01ーーーーーーー

 ヒア・カムズ・ザ・サン

 小路幸也

 集英社文庫(2017/04/25:2015)

 ★★★

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ヒア・カムズ・ザ・サン 東京バンドワゴン (集英社文庫)

 

 

小路幸也東京バンドワゴンシリーズは、文庫本になれば読むことにしています。ところが今年は、文庫本が出た4月頃はバタバタしていたこともあってか、すっかり忘れていました。先日ようやく思い出して、あわてて読んだ次第です。今年中に読めてよかった。

このシリーズは通常4編の短編が収められていて、本書はシリーズ10作目になります。4作目の長編『マイ・ブルー・ヘブン』と8作目の短編集『フロム・ミー・トゥ・ユー』は番外編と云える内容なので、本編としては8作目ということになります。

内容の方は相変わらずです。まあ、それが良いのですが。東京の谷根千辺りで明治18年創業の古本屋「東京バンドワゴン」を営む堀田家の今どき珍しい大家族と周囲の人たちが繰り広げる、笑いあり涙ありのホームドラマです。毎回巻末に、「あの頃、たくさんの涙と笑いをお茶の間に届けてくれたテレビドラマへ」とあるように、このシリーズは、1961年生まれの著者が少年期に見ていたであろう昭和40年代から50年代のテレビのホームドラマを彷彿とさせる内容です。

 

本シリーズが始まったとき、小説内の時間は単行本第1作の刊行年月と同じ2006年4月だったと推定されます。これは、『マイ・ブルー・ヘブン』で本シリーズの語り手である堀田サチ(五条辻咲智子)が昭和20年の時点で18歳だと言っていることが根拠となります。当時は数え年だったので、サチさんは昭和3年生まれでしょう。シリーズ1作目では、サチさんは既に亡くなっていて幽霊として読者に語りかけているわけですが、76歳で亡くなって2年になるとありますから、1928+76+2=2006 となります。

ただし、18歳というのが満年齢だとしたら、2005年になります。これは、それほど重要なことでもないと思いますので、どちらでもかまわないでしょう。以下、2006年説を採用して話を進めますが、これは飽くまで私個人の勝手な解釈です。

 

シリーズ1作目では堀田家は、サチさんの夫・堀田勘一(84)、勘一の長男・我南人(65)、我南人の長女・藍子(40)、我南人の長男・紺(39)、我南人の次男・青(31)、藍子の長女・花陽(17)、紺の妻・亜美(39)、紺の長男・研人(15)の8人家族でした。

それが、今作までに、紺の長女・かんな(4)、青の妻・すずみ(27)、青の長女・鈴花(4)、藍子の夫・マードック(40?)、それに『マイ・ブルー・ヘブン』で登場した戦災孤児で堀田家に同居していた元女医の大山かずみ(74)が加わって、13人に増えています。もっとも、藍子・マードック夫妻と大山かずみは、堀田家の隣にできた「藤島ハウス」に住んではいますが。ペットも、猫の玉三郎、ノラ、ポコ、ベンジャミンの4匹に、犬のアキとサチが加わっています。

 

今作は、小説内の時間では第1作目から数えて6年目になる2011年の8月後半から始まることになります。現実の時間よりもゆったりとは流れていますが、時間は着実に流れていますので、出会いもあれば別れもあります。上に紹介した登場人物に付いているカッコ内の数字は2011年に誕生日を迎えての年齢になります。

第1作目では、小学4年生だった研人も中学3年生になり高校受験を控えています。研人はカノジョのメリーちゃんと同じ私立高校へ行きたいのですが、そこはかなりの難関校で、研人の学力ではかなりヤバそうです。そんなわけで、メリーちゃんと猛勉強をする研人の高校受験のエピソードが今回の全体テーマになっていると云ってよいでしょう。そこにニューアルバムをレコーディング中の我南人のエピソードがからんでくる感じです。

 

「猫も杓子も八百万」は8月後半の話で、幽霊騒ぎのエピソードに「東京バンドワゴン」の値札付きの本を持ち込んだ遺品整理屋という男性と大人しそうな少年がからんできます。お祓いをしようとした元神主の祐円さんが倒れたりします。そして、かんなちゃんが撮った写真に霊が…

 

「本に引かれて同じ舟」は10月の話で、図書館で勝手に増える本の怪のエピソードに堀田家の裏庭を盗撮する謎の若い女性と堀田家の裏に住む増谷青年の恋バナがからんできます。祐円さんの神社で結婚式があったり、おめでたの報告があったりもします。祐円さんは、小料理居酒屋〈はる〉で一人晩ご飯を食べながら「東京バンドワゴン」で買った本を読む老婦人が気になる様子。

 

「男の美学にはないちもんめ」は、クリスマスから年末にかけての堀田家の恒例行事の報告のあと、年が明けて2012年元旦から話が始まります。初めて描写される堀田家のお正月の情景にほのぼのとさせられますが、正月休みが終わって、宮内庁の役人とかいう客がやって来たところから風向きが怪しくなってきます。その話が巡り巡って、我南人のバンドがレコーディング中のニューアルバムの発売に横槍が入るのです。どうする我南人?

飼いならされて毒気を抜かれたロックなんて、ロックじゃないよねぇ。ただのクソだよねぇ。と、私は思います。

他にも、猛勉強中の研人に気づかいをみせるバンド仲間の友情話とか、すっかり更生して我南人の事務所で働いている会沢夏樹が、一回り大きな男になるためにある決断をするエピソードとかがからんできます。

 

「ヒア・カムズ・ザ・サン」は3月の話で、研人の高校受験の結果が分かります。そこに、引き続き夏樹のエピソードがからんできます。受験の結果が出たことで研人とメリーちゃんの間がギクシャクしてしまうのですが、研人の中学校の卒業式が終わった夜、煮え切らない態度の研人に従姉だけど姉弟のように育った花陽がブチ切れます。そこに二人の祖父である我南人が登場して決めゼリフを言います。

「LOVEだよねぇ」

“Here Comes The Sun” は、ビートルズ・ナンバーの中で、私の好きな曲トップ10に入ります。ジョージ・ハリスンの曲では一番好きな曲です。春になると聞きたくなる曲トップ10にも入ります。ジョージの “LOVE” がいっぱい詰まったこの名曲は、この季節のこのエピソードにピッタリの曲と云えるでしょう。

 

このシリーズは、往年のホームドラマへのオマージュだけあって、ストーリーの構成が型にはまっているのが特徴だと云えます。私は毎回の朝の賑やかな食卓風景の描写が好きです。小料理居酒屋〈はる〉で出てくる季節の料理も楽しみです。

内容的には甘っちょろいと云えば甘っちょろい話が多いので、これが例えば時代設定が江戸時代の人情話だったりしたら、多分読まないだろうと思います。昭和テイストでも時代設定が現代だからこそこの小説の存在意義があるように思います。私は年に何回かシュークリームとかプリンとか甘~いものを無性に食べたくなることがあるのですが、このシリーズを読むのはそれと似たようなものでしょうか。たまには、甘味も欲しいものです。

 

 

今回は、『マイ・ブルー・ヘブン』時代のことを思い出させるようなエピソードがいくつか出てきました。『マイ・ブルー・ヘブン』ではジーン・オースティンが歌う “My Blue Heaven” が出てきますが、私はノラ・ジョーンズがカバーしたバージョンが好きでスマホにも入れています。

実は、本書のことを思い出したのは、ユーチューブで映画『日の名残り』と映画『わたしを離さないで』の動画を探していたときに、たまたまこの動画を見つけたからでした。大瀧詠一が歌う “My Blue Heaven” は、まさに天竺気分で心地よいです。これはもうオススメです。

 

 

私の天竺~My Blue Heaven_大瀧詠一 - YouTube  by boy mrharrykeel (3′58″)