森の踏切番日記

ただのグダグダな日記です/2018年4月からはマイクラ日記をつけています/スマホでのんびりしたサバイバル生活をしています/面倒くさいことは基本しません

『デート・ア・ライブ18 澪ゲームオーバー』あらすじと感想

読書録2018ーーーーーーーーー

デート・ア・ライブ18 澪ゲームオーバー

橘公司

ファンタジア文庫(2018/03/20)

★★★

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私はラノベ読みではないのですが、たまにラノベが読みたくなります。書店に行ってもラノベ・コーナーは滅多にチェックしないので、本書が3月に出てたことに全然気がつきませんでした。先日、久し振りにラノベ・コーナーをチェックして、デアラの新刊が出てたことにようやく気が付いて、慌てて買って読んだです。そんなわけで、遅ればせながら、あらすじと感想をやります。

 

 

 

デート・ア・ライブ18 澪ゲームオーバー (ファンタジア文庫)

〈Mio Takamiya〉

 

 

 

まず、シンのフルネームが「崇宮真士」だと判明した。前回の感想(『デート・ア・ライブ17 狂三ラグナロク』のあらすじと感想 - 森の踏切番日記)で、現在の名前(士道)と実妹の名前(真那)とから、シンは真路ではないかと予想したのだが、「道」の方ではなくて「士」の方だったか…

惜しかった…

 

 

第1章 母なる零(ゼロ)

精霊が一から十までなので零(ゼロ)の文字を含む澪が生みの親であることと、村雨令音の「令」は「澪」の一部分なので[澪⊃令音]であることは、すぐにピンとくる。まあ、さすがにそれくらいは分かってた…

狂三の中から出てきたのは少女の姿の崇宮澪だった。時崎狂三の生命反応消失。村雨令音正体を現す。ということで、

〈ファントム〉=始原の精霊=村雨令音=崇宮澪

であることが確定。精霊としての崇宮澪(=村雨令音)の姿が明らかになる。

澪は、士道にシン(真士)の記憶を移植し、士道の記憶を消去しようとする。そうすることで、死んでしまったシンがよみがえるというのだ。単にシンのコピーを造るだけならば話は簡単なのだが、「シン」に精霊の力を与え永遠の命をもたらそうとしたばっかりに、長い年月と数多の犠牲を必要としたのだ。しかしながら、士道は士道であってシンではない。仮に士道が士道自身の記憶を失ってシンの記憶だけを保持したとしても彼はシンではない。澪はその事に気がついていない。

士道ピンチ!というところで、十香と八舞姉妹が駆け付ける。澪に安全な場所(学校のシェルター)まで飛ばされる士道。澪たちに迫り来るニベちゃんズ。始原の精霊のチートな力〈万象聖堂(アイン・ソフ・オウル)〉を見せつける澪。

あれは、形を持った『死』そのものである──!

澪に対峙する十香と八舞姉妹。

「……かかってきたまえ、私の可愛い──娘たち」

 

 

第2章 三人の魔術師(メイガス)

アルテミシアの無力化に成功した折紙たちのもとにも澪の強大な力が及ぶ。熾烈な闘いを繰り広げるエレンとウッドマン。十香と八舞姉妹の渾身の一撃は澪には通じない。霊結晶(セフイラ)を抜き取られて倒れ伏す八舞姉妹。十香絶体絶命のピンチ! 十香のもとへ駆け付ける六喰、四糸乃、折紙、真那。学校のシェルターを抜け出し十香たちのもとへ突き進む士道に立ちふさがるニベちゃんズ。そして、アイザック・ウェストコット。

 

 

五河琴里の父母の名前は、五河竜雄と穂村遙子というようだ。

 

 

第3章 世界樹は落葉し

「絶望に悦びを見出す」というウェストコットの属性は少し分かりにくい。他者の絶望に悦びを覚えるドSさんなのか、自らの絶望に悦びを覚えるドMさんなのか。両方ありだとしたら、弩変態だな。死に魅入られた男ということか。破滅の美学というのがあるけれども、最大の快感は自らの破滅だということにならないか。ウェストコットはシンを直接殺した男だが、士道も間接的に殺していることになる。

エレンのウッドマンに対する想いは、結局愛しさ余って憎さ百倍だったんだなあ。エレンとの闘いには勝ったものの力尽きるウッドマン。静かに眠るエレン…

澪は更なるチートな力〈輪廻楽園(アイン・ソフ)〉によって隣界を現出させる。これはまさに、何でもアリでいやがります。六喰が倒され、澪によって記憶を取り戻した真那は隣界の外へ飛ばされ、隙を突いた折紙の攻撃は通じず、四糸乃も倒される。追いつめられる十香と折紙。その時、〈フラクシナス〉の主砲〈グングニル〉の閃光が澪を呑み込む。その機を逃さず、十香と折紙の渾身の一撃が澪を貫く!

かと思われたが、貫かれたのは折紙の方だった。倒れ伏す折紙。意識を失う十香。地に墜ちていく〈フラクシナス〉…

〈フラクシナス〉の残骸の中で気がついた琴里は、澪とその足元に横たわる二亜を見出す。令音(=澪)に「全部、嘘だったの?」と問いかける琴里。「嘘ではないよ」と答える令音。

「……シンを取り戻すためならば、私は親友でも喰らう。それだけだ」

「……ふざ、けるな。何よ、それ」

消えゆく琴里の意識…

 

それにしても、共闘する十香と折紙のやり取りには感慨深いものがあるなあ…

友情よりも愛情をとるというのはあるあるだな。

 

 

第4章 最先と最後は対峙し

※「最先」は「いやさき」と、「最後」は「いやはて」と読ませています。

全知の〈神蝕篇帙(ベルゼバブ)〉を持つウェストコットと無数に群がるニベルコルに苦戦する士道。苦境に陥った士道のもとに駆け付ける美九と七罪。援軍を得た士道は再度ウェストコットたちに立ち向かう。士道は渾身の一撃、十香の持つ【最後の剣(ハルヴァンヘレヴ)】をウェストコットに叩き込む。だがそれも、ウェストコットには通じない。どうする士道!

いや、士道にはウェストコットも知らない必殺技があったのだ。厨二病にもかかっておくものだ…

満身創痍のウェストコットに崇宮真士として殺意を覚える士道だが、五河士道として思い止まり〈神蝕篇帙〉を封印するにとどめる。その時、澪が現れウェストコットと美九と七罪から霊結晶を抜き取る。倒れ込む美九と七罪。澪は十個の霊結晶を全て回収し終えたのだ。

「これでずっと一緒だよ。──シン」

澪の手が、士道の頭に触れる。精霊たちを失い抵抗する気力を失った士道の意識が遠ざかる…

とその時、澪の霊装を切り裂くように中から〈鏖殺公(サンダルフォン)〉を握った十香が飛び出してきた!

※ちなみに「鏖」は「オウ」と読みますが、「みなごろし」とも読みます。

 

 

第5章 引き金に指を掛けたのは

なぜ十香は復活できたのか?

他の精霊はもとは人間だったので人間として死んでしまったのだが、十香は澪と同じく生まれながらの精霊だった(霊結晶に自我が芽生えた)ので、死なずに霊結晶の中に封印されたということのようだ。なるほど。だから、十香だけ最初名前がなかった。なるほど。それにしても、反転体の十香は物知りだな。人格が当初より変わったような気がするし。絶望してないし。

ここに来て話は、澪のシンか、十香のシドーか、という凄絶なラブバトルと化す。十香は澪の中から抜け出す際、澪の霊力の一部を奪い取ってパワーアップしていたのだ。これまでまったく歯が立たなかった澪に対して攻め込む十香。十香のバックアップをする士道。

「……ああ、やっぱり君に、絶望は似合わない」

十香の思いも寄らぬ攻撃に初めて傷を負う澪。十香に勝機がめぐってきたか!

ところがところが、始原の精霊澪には更に更にチートな奥の手があったのだった…

その名も無の天使〈   (アイン)〉…

それは、全てのものを消滅させる、あらゆる条理を無視した力…

十香は霊力とともに消えて無くなってしまった…

それでもあきらめずに澪に抗う士道…

 

※ちなみに、「アイン」、「アイン・ソフ」、及び「アイン・ソフ・オウル」は、ユダヤ教カバラに基づいた言葉です。さすがにこれは気がついた。「アイン」は「無」、「アイン・ソフ」は「無限なるもの(全=神)」、「アイン・ソフ・オウル」は「無限なる光」という意味がそれぞれあります。

そういえば、「セフイラ」もカバラに基づいた言葉で、セフィラ(複数形がセフィロト)は十個だった。もっと早く気がつくべきだった。

さらに言うと、狂三の天使である弾の名前の【アレフ】【ベート】【ギメル】【ダレット】【ヘー】【ヴァヴ】【ザイン】【ヘット】【テット】【ユッド】はヘブライ語に基づいています。ヘブライ語のアルファベットにはそれぞれ数字が割り当てられていて上の10文字にはそれぞれ1~10までの数字が割り当てられています。デアラはカバラから相当ヒントを得ていると見ることができます。

 

その狂三だよ!

狂三来たーーーーーーーーーーーーーーー!

どして?

なんと狂三は死の間際に、撃った対象を未来へ送るという禁断の弾【11の弾(ユッド・アレフ)】を分身体の一人に撃ち込んでいたのだ。狂三の分身体は確かに士道だけに分かるメッセージを伝えて力尽きた。士道の体内には狂三の【6の弾(ヴァヴ)】が封印されていたのだ。狂三の分身体の暗示的な言葉によって、その事を思い出した士道は狂三の天使【6の弾】を呼び出し、銃口を自らのこめかみに押し当て、その引き金を引いた…

【6の弾】は撃った対象の意識のみを過去の身体に飛ばす。その力によって士道は意識だけ前日に遡行させることに成功する。間近に迫った破滅的な未来を覆すにはどうすれば良いのか分からず途方に暮れる士道だが、十香と語らううちに自らがなすべき事に思い至る。

「令音さん。──明日、俺と、デートしませんか?」

と、ここで To Be Continued となる。

 

 

つまり、シンにデレている令音(=澪)を士道にデレさせる、ということ?

それで解決できるの?

まあ、デアラらしい解決法だと言えるけど…

それにしても、このシリーズは時間軸がぐちゃぐちゃやなあ。これで、前巻と本巻の出来事が全てチャラになってしまったわけだし。士道の記憶の中では一貫してるけど。ラノベらしいといえばラノベらしいけど…

今後の展開で気になるのはウェストコットだろうか。彼は全知の〈神蝕篇帙〉を持っているので、本巻の内容を知ることができる。なので、士道の必殺技が通じなくなる可能性があるのではないかな。そこが波乱要素となるのかならないのか。

狂三派の私としては、これで狂三の死が帳消しになったので、喜ばしいことではある。彼女の報われない愛をささやかな報酬で満足させている健気なところがかわいいと思う。澪に人生を台無しされ澪に復讐することだけに人生の全てをかけざるを得なくなった彼女の人生は凄絶だ。

 

この巻には本章の合間に、澪と真士の読んでるこっちが赤面したくなる初々しい初デートの顛末が断片として挿入されている。これがないと、澪のシンに対する純粋な想いが読者に伝わらないので効果的な挿話になっている。また、このシリーズは恋愛経験の少ない純朴な少年が女の子とデートを重ねていくうちに成長する物語でもあったなあと改めて気づかされる。

澪は「愛」という概念が具象化したような存在と見ることもできると思う。シンを失い自らの体内で「シン」を複製(再生ではない)した澪には、恋愛感情だけでなく母性愛も芽生えたようだ。霊装のマタニティドレスがそれを象徴している。澪のシンに対する愛情は、恋愛感情と母性愛が混然としている。彼女の「愛」は純粋であり独善的である。愛というのは本質的に独善的なものなのである。澪の精霊としての属性は「神(deus)」だということだが、神の愛というのは本来独善的なものなのである。「万人に向けられた神の愛」というのは革命的な思想だったのだ。そして、いまだに神の愛は万人には向けられていない。

※細かいことを言うと、「デウス(deus)」は男性名詞なので澪には相応しくない。

純愛や母性愛を手放しで賛美する人を私は信用しない。母性愛は本能的なものに過ぎない。純愛に限らず、純粋なものは危険である。純粋なものは異物を排除しようとする。純愛は狂気と紙一重なのである。そういう意味で澪とウェストコットは正反対の属性でありながら、よく似ていると思う。神と悪魔がよく似ているように…

澪も一種のヤンデレと言えるかなあ…

究極のヤンデレかもな…

神の愛とは究極のヤンデレか…

本巻は本シリーズの中でも最も神話的なエピソードで読み応えがあった。全部チャラになったけど…

次巻の展開が全く読めないが、デアラらしいユニークな展開を期待したいと思う。サブタイは「令音ナントカ」になるのだろうか?

「澪ゲームオーバー」と対応するならば、

「令音……」

思いつかないや…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死んでしまった者を甦らせることなどできはしない。

 

 

 

それが、この世の道理…