森の踏切番日記

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『筒井康隆、自作を語る』は筒井ファン必読書であるので読んでみた

読書録2018ーーーーーーーーー

筒井康隆、自作を語る

筒井康隆日下三蔵

早川書房(2018/09/25)

★★★★

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筒井康隆、自作を語る

 

 

筒井康隆氏が自作について語ったとなれば読まないわけにはいかないだろうと書店で本書を見かけてすぐに購入して読んだ私は中学時代からの筒井康隆ファンであるがあまり物にはこだわらない性格でほとんどの作品は文庫本で読むか図書館で借りて読んだという程度のファンでしかないと謙遜するものの本書の巻末に親切にも収められた筒井康隆全著作リストで確認してみたところ筒井康隆全集は図書館で借りて全部読んでいるし小説に関しては最近作の単行本を除いてほとんど全て読んでしまっていることに気がついたのであるどうも最近調子が出ないなと思ったら筒井分が足りていなかったか筒井作品をもっと読みたい読まねば…

 

本書は二部構成になっていて、冒頭の「編者挨拶」によると、第一部の「筒井康隆、自作を語る」は、2014年11月から2017年4月にかけて出版芸術社から刊行された《筒井康隆コレクション》(全7巻)の奇数巻刊行時に催されたトークイベントを再録したもので、第二部の「自選短編集 自作解題」は、2002年5月から2003年3月まで徳間文庫から隔月で刊行されたテーマ別自選短編集(全6巻)の巻末に掲載された著者インタビューが再録されたものである。どちらも編者がインタビュアーであったことから一冊にまとめられることになったようである。第一部が長編と単行本が主に取り上げられているのに対して、第二部は短編が取り上げられていて第一部を補完する内容になっているとのことである。過去にも対談やインタビューをまとめた本は何冊か出ていると思うが、デビュー作から最新作までの作品について著者自身が語った内容の本は今まで無かったわけで、本書は筒井ファン必携の一冊であると言っても過言ではないであろう。

 

編者は出版芸術社の編集者からフリーに転身した人で、SF、ミステリ、アニソンに造詣が深いということだが、確かにSFとミステリに関しては、本書の端々から編者の博識が伝わってきて、筒井作品に関しても本当によく知っておられるし、よく調べておられると感心した。私のように広く浅く薄っぺらく生きている人間は、こういう人には到底かなわないと脱帽する次第である。そういう人がインタビュアーであったので、筒井氏も語りやすかったであろうし、読者も安心して読めるというものである。

 

第一部に関しては、筒井氏のサラリーマン時代から始まり、日本SF幼年期の裏話あり、当時の出版業界の裏話あり、名物編集者の裏話あり、各単行本刊行時の裏話ありの盛りだくさんの内容で、デビュー作から最新作に至るまでのほとんどの代表作について言及されているだけでなく、いまとなっては入手困難な絶版本の話などもあり、興味深く読んだ。これまでの日記やエッセイなどで読んだエピソードもあったが、初めて知る話も少なからずあり、また、筒井氏の作家人生をこれだけまとまった形で振り返る機会もこれまで無かったので、なかなか有意義な読書であったと思う。

第二部に関しては、かつて何度も読み返した抱腹絶倒の短編が次から次へと出てきて、これも読んだなあ、これも読んだなあ、これは読んだはずだが内容を思い出せないなあと、取り上げられる短編ごとにリアクションしてしまう楽しさがあった。それにしても、よく覚えているものだ。

 

私は十代の頃、自分はSFファンだと思っていたのだが、結局のところ筒井康隆ファンであったのだ。私は読書が趣味だと思っていたのだが、結局のところ筒井作品が読みたいだけだったのだ。私にとって世界は意味を失って久しいので、例えば村上春樹平野啓一郎などの作品を読んでも最早そこに意味を見出せなくて困ってしまうのだが、筒井康隆の作品は相変わらず読み続けられるのである。

 

 

 

 

筒井康隆、自作を語る

筒井康隆、自作を語る

 

 

 

 

 

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