1月の読書録05ーーーーーーー
百人一首の謎を解く
草野隆
新潮新書(2016/01/20)
1701-05★★★
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🐱著者は、1957年神奈川県生まれ。上智大学文学部国文学科卒、同大学院文学研究科博士課程後期中退。修士(国文学)。跡見学園女子大学、立正大学等で非常勤講師。星美学園短期大学国文学科および人間文化学科の教授を経て、名誉教授。
🐱この本は、去年購入したのだが、ずっと未読本コーナーに放置していた。お正月なので、ようやく読む気になった。
🐱歴史の謎解き本に関しては、自説に有利な資料ばかり集めてきて、自説に不利な資料は無視して、自家撞着的な論理を展開するような本が多いので、あまり読まないのだが、どうして購入したのだろう? まあ、いいや。
🐱本書の特徴は、藤原定家に撰歌を依頼した蓮生(宇都宮頼綱)に注目していることと、和歌色紙が張られたであろう蓮生の嵯峨中院山荘に注目していることだろう。
🐱蓮生こと宇都宮頼綱については、これまで余り知らなかったので参考になった。蓮生は熱心な浄土宗の信徒であり、僧侶としても御家人としても有力者で財力もあったという。定家が、撰歌にあたって、依頼者である蓮生の浄土宗的世界観を考慮に入れたのではないかという指摘は、なかなか興味深いものがある。
文屋朝康(葛飾北斎)
🐱ただ、定家が撰歌にいろいろ仕掛けを施したというのは、どうだろうか。和歌というものは解釈しようと思えば、いかようにも解釈できるような所があって、仏教的世界観を反映していると思って読めば、その様に解釈できるというだけではないだろうか。
🐱嵯峨中院山荘の構造については、実際に発掘調査でもしてみなければ何も分からないので、何を言っても推測の域を出ない。平安時代の寝殿造についても見直すべきだという話を読んだことがある。
参議篁(葛飾北斎)
🐱本書は、視点としては面白いものがあったが、自家撞着的な論理の展開が見られるようだ。本書の参考文献として挙げられている、『百人一首への招待』(吉海直人著:ちくま新書)と比較しても、論考が甘いのではないかという印象を持った。
重要なのは、そういったさまざまな解釈をさえ許容してしまう百人一首の懐の深さなのです。
(『百人一首への招待』吉海直人)
🐱百人一首は、和歌の入門者向けのような扱いを受けてきているが、このような懐の深さを持つのは、百人一首が文学作品として優れているからではないかと思う。
菅家(葛飾北斎)
🐱嵯峨の厭離庵周辺は、定家の山荘跡としているウェブサイトもあるが、正しくは蓮生の嵯峨中院山荘跡。後に娘婿で定家の息子の藤原為家が相続したので間違わられやすい。
🐱藤原定家の小倉山荘(時雨亭)跡としては、常寂光寺境内と二尊院内があるが、実際は、落柿舎周辺だったらしい。
📄関連図書
😺★★★☆
🐱絶版になったちくま新書の『百人一首への招待』を加筆修正して、改めて角川ソフィア文庫から出版したもの。新たに和歌に現代語訳が追加された。(ちくま新書版で読んだ)
😺★★★★
🐱百人一首を解説した文庫本の定番。巻末に百人一首成立に関する研究史が詳しく書かれている。
🐱★★★☆
🐱百人一首の鑑賞中心。学習者向き。
😺★★★★
🐱百人一首の作者に注目して平安時代の王朝文化を読み解いている。特に、定家と後鳥羽院との関係について踏み込んだ論考を行っている。
百人一首(2) | ぬこ KAT | Pinterest | Cat, Animal and Funny animal