4月の読書録04ーーーーーーー
宇宙138億年の謎を楽しむ本
佐藤勝彦・監修
PHP文庫(2017/02/15)
1704-04★★★
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🐱本書は、1999年11月にPHP研究所より刊行された『最新宇宙論と天文学を楽しむ本』をもとに大幅に加筆・再編集したもので、文庫オリジナル作品である。前作のサブタイトルは、「太陽系の謎からインフレーション理論まで」だったが、本書のサブタイトルは「星の誕生から重力波、暗黒物質まで」となっている。
🐱本書の基となった『最新宇宙論と天文学を楽しむ本』は、天文学・宇宙論の入門書として書かれたもので、太陽系や恒星・銀河に関する基本的な知識から佐藤勝彦先生のインフレーション理論を中心とした宇宙論までを解説したものだったが、21世紀に入ってからの天文学・宇宙論の進歩は目覚ましいものがあり、昨年の「重力波の直接観測」の発表を受けて、ようやく改訂されることになったようだ。というのも、「重力波天文学」の誕生は、インフレーション理論の実証という面でも非常に重要だからであろう。
🐱本書は、前作の天文学・宇宙論の入門書として書かれた部分は、そのまま受け継いでいるようである。それに、今世紀の天文学・宇宙論の成果を加筆して編集し直したようである。全体的に平易な内容で数理的な話題にはあまり踏み込まずに解説されている。少し物足りない感じがするのは否めないが、天文学・宇宙論の入門書としては、おすすめ。
🐱今更こういう入門書を読むのは、基本的な知識を整理して確認するためで、そういう意味では役に立った。特に、最近の天文学・宇宙論の成果が簡潔にまとめられている点が良かったと思う。これ一冊で十分という訳にはいかないが、時々こういう本を読むのも悪くはない。
(以下の画像は、本書に収録されているものではありません)
1章・重力波が切り拓く新たな天文学
🌟本章では、まず最新の話題として重力波を取り上げている。基本的な情報は十分にまとめられているが、理論的な説明はほとんどなされていないので肩すかしを食らったような感じを受ける。量的にも20ページ程度しかない。
🌟ここで注目すべき点は、原始重力波である。原始重力波を観測できれば、インフレーション理論を裏づける決定的な証拠になるといわれていて、宇宙がどのように誕生したのかを検証できるのである。
🌟本章の大半は、天文学の歴史は望遠鏡の歴史ということで、ガリレオから始まる天体望遠鏡の歴史を紹介している。特に、すばる望遠鏡についての解説が詳しいのが良かった。他には、電波望遠鏡、ハッブル宇宙望遠鏡、ガンマ線バースト、スーパーカミオカンデなど、おなじみの話題が多い。
2章・母なる太陽と地球の兄弟たち
🌟本章は、太陽系と太陽についての基本的な解説である。最近のNASAやJAXAの探査計画や各惑星のプロフィールも紹介している。特にJAXAの「はやぶさ」や「あかつき」などの活動について詳しい。
🌟各惑星の数値データなどをいちいち覚えたりはしないので、こういうのを読むと新鮮な驚きがある。たとえば、金星の公転周期が225日であるのに対して、自転周期は243日だという。つまり、金星の「1日」は「1年」よりも長いということになる。何か不思議な気持ちになる。
🌟本章での注目点は、やはり、太陽系内に地球外生命体が存在するかであろう。NASAは、地球外生命体の発見に熱心な印象を受ける。有力候補は、木星の衛星エウロパとガニメデ、それに土星の衛星エンケラドスのようだ。
3章・星の誕生から死まで
🌟本章は、星の一生など恒星に関する基本的な解説が中心で、お馴染みの内容である。注目点は、系外惑星(太陽系外惑星)の発見であろう。1995年に系外惑星が初めて発見されてから、およそ20年で3500以上の系外惑星が発見されている。
🌟当初は、木星のような巨大惑星は、中心星から遠く離れたところを10年以上の周期で公転するはずだと考えられていたところが、実際は、中心星のそばを数日から数百日という短周期で公転する巨大惑星が存在することが判明したことにより、系外惑星発見ラッシュが始まったのだそうだ。科学の歴史は、思い込みとその打破の繰り返しだという一つの例として興味深い。
🌟本書は、2016年11月末現在のデータが使われているようで、TRAPPIST-1系については触れていない。TRAPPIST-1系の7つの惑星はbからhまでの記号が付いていて、何故aからではないのだろうかと疑問に思っていたのだが、中心星をaとすることが分かった。なるほどね。
🌟NASAは、生命が存在する可能性のある系外惑星の発見にも熱心な印象を受ける。
🌟浮遊惑星も興味深い。想像力を刺激する。
4章・銀河を超えて宇宙の彼方へ
🌟本章は、天の川銀河に関する基本的な解説と宇宙の中での銀河の分布に関する基本的な解説で、お馴染みの内容である。ダークマターやクェーサーなどの解説があるが、特に目新しい話題はなく、量も少ない。
5章・宇宙の過去の姿が見えてくる
🌟本章は、宇宙論についての基本的な解説で、佐藤勝彦先生監修の本ではお馴染みの内容だが、よくまとまっていて分かりやすい解説だと思った。もちろん、インフレーション理論について詳しい。ダークエネルギーなどの解説があるが、特に目新しい話題はない。
🌟「夜空はどうして暗いのか? 」という科学の豆知識を集めた本に有りがちな話題が本章の導入で紹介されていたのだが、久し振りに読んで、すっかり忘れていたことを思い出した。
🌟この問いの答えとして、「太陽が出ていないから」は、当然、間違い。宇宙が無限に広がっていて、星の数も無限にあるという定常宇宙を仮定すると、理論的には宇宙全体から届く星の全光量は太陽の明るさよりずっと明るくなるはず。これを「オルバースのパラドクス」と呼ぶ。実際に夜空は暗いのだから、このパラドクスは仮定が誤っていることになり、宇宙は有限であり星の数も有限であることになる。
🌟そして、「宇宙は膨張している」と考えることでも、このパラドクスを解決することができる。これは、時間が有限であることを意味し、遠くの星の光はまだ地球に届いていないと考えることができ、また、膨張による赤色偏移によって可視光が赤外線に引き伸ばされる星もあるはずであり、夜空が無数の星の光に満たされることはないということになる。
宇宙138億年の謎を楽しむ本 星の誕生から重力波、暗黒物質まで (PHP文庫)
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🐱特殊相対性理論、一般相対性理論、宇宙論について、数理的な話題にはあまり踏み込まずに解説している。相対性理論に関する一般向け解説書の中では、平易な内容で分かりやすい方だと思う。数式も一応載っている。特に、双子のパラドクスについて一般相対性理論まで踏み込んで解説している点が良いと思う。宇宙論の内容は本書とあまり変わりない。アインシュタインの生涯を紹介した章もある。相対性理論の入門書としておすすめ。
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🐱量子論について、一般向けに解説した本で手頃なものは意外と少ないのだが、この本は量子論の発展の歴史を紹介しながら、量子論の基本的な知識について分かりやすく解説している。ただし、1950年代以降の素粒子理論の進展や標準模型の確立の歴史については触れていないし、量子もつれや超弦理論などの新しい話題は載っていないので、この本だけでは不十分ではある。量子論の入門書としてはおすすめ。
🐱本書を含めて3冊とも手軽に楽しめる入門書だと思う。🐥
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