森の踏切番日記

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井伊直虎関連本を読む(3)

7月の読書録03ーーーーーーー

 女城主・井伊直虎

 楠戸義昭

 PHP文庫(2016/05/11)

 ★★☆

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今年は、NHKの大河ドラマを初回から見続けて感想も書いてきたのだが、ちょっと飽きてしまった。毎年思うことだが、やはり一年は長い。

 

ドラマの方は、ようやく運命の永禄11年(1568)に入った。寿桂尼の命日は3月14日である。直虎が今川氏真井伊谷の地頭職を取り上げられ、小野但馬守が井伊谷城代になる11月までには、まだまだ紆余曲折がありそうだ。12月には武田・徳川が駿遠に侵攻するのだが、小野政次の最期は9月頃に放送するつもりだろうか。

 

虎松の母親(しの)が松下源太郎清景と再婚した時期は、実際のところは不明であるようだ。なぜ、再婚の相手が松下源太郎だったのか以前から疑問だったのだが、ドラマの徳川方への人質としてというのは、松下源太郎自身は徳川の家臣でもないし、少し無理があるのではないだろうか。

 

 

さて本書だが、井伊直虎について書かれた本としては、よくまとまった内容だと思う。直虎については史料が少ないので、どの本も内容は似たり寄ったりになるし、直虎の生涯だけでは一冊の本にはならないので、他の部分でどのように差別化を図るかがポイントになる。

 

本書の場合には、直虎以前の井伊家の歴史が詳しく紹介されていて参考になった。直虎の生涯とその間の井伊家の動向についても、脇役陣も含めてこれまでに読んだ直虎関連本よりも詳しく書かれていたように思う。史料や伝承を素直に解釈すればこうなるだろうという内容で無難で平凡な解釈と云える。

 

直虎の人物像については著者の想像で描かれているが、これも無難で平均的な解釈と云える。小野氏についても素直に悪家老という解釈をしている。小野氏については高野澄の『井伊直政』の解釈の方が納得できる。井伊家が生き残ったのは、やはり南渓和尚の存在が大きかったのだなあと、再認識した。

 

本書では直虎の時代の井伊家の石高をおよそ二万五千石と見積もっている。どのように計算したのか根拠は分からないが、決して大きくはないが小さくもない微妙な数字だ。因みに、丸島和洋の『真田四代と信繁』によると豊臣政権時代の真田昌幸の上田領が三万八千石、信幸の沼田領が二万七千石、秀吉の馬廻衆だった信繁が一万九千石だったという。

 

著者は新聞社出身だけあって、井伊家縁の各地まで出かけて現場を取材している点は好感が持てた。亀之丞(井伊直親)の信州伊那谷での潜伏先である市田郷(現高森町)にも取材に出かけている。現地では、亀之丞は現地妻と一男一女をもうけたことになっているそうだ。これは知らなかった。亀之丞が井伊谷に帰還する際、女の子(高瀬姫)は連れて帰ったが、男の子は置いていったという。その子孫もちゃんといるそうだ。

 

直虎の出家は、直親帰還の前年にあたる天文23年(1554)としていて、直親に現地妻との間に子供がいることを知ったことを出家の理由としているが、これは飽くまで著者の想像に過ぎない。本当のところは分からない。高瀬姫は、武家の娘にありがちな人生を送ったようだ。墓は彦根にあるそうだ。

 

虎松(直政)の生涯についても、通説通りの内容で紹介されている。直政が22歳(天正10年=1582年)まで元服しなかったのは異例のことだが、これは直虎が生存している間は直虎が井伊家の当主であることを尊重したためという解釈をしているのが印象に残った。直政の元服については、家康の意向もあっただろうから少し無理な解釈かと思うが、直政の異例に遅い元服は謎の一つではある。

 

ともあれ、大河ドラマ『おんな城主直虎』の前半の内容の復習と後半の流れの展望は出来たので良しとする。虎松の奥三河鳳来寺への逃亡には、奥山六左衛門が亀之丞の時の今村藤七郎の役目を果たしそうである。井伊谷三人衆のその後は大体知っていたが、傑山昊天のその後や松下常慶など脇役陣のその後など細かい部分の情報が分かったのも収穫だった。

 

巻末には、著者の娘さんによる井伊家縁の各地を詳しく紹介した「特別史跡ガイド 女城主・直虎と井伊家の歴史の歩き方」が掲載されているのも本書の特徴である。

 

 

大河ドラマの感想を書くときには、 ドラマと史実とは別物だし先入観にとらわれたくなかったので、脇役陣の素性などは細かく調べずに書いた部分もあって、高瀬姫武田の間諜説とか頓珍漢なことを書いてしまったこともあったが、まあ気にしないでおこう。

 

 

 

女城主・井伊直虎 (PHP文庫)

女城主・井伊直虎 (PHP文庫)