森の踏切番日記

人生LARKしたい

「客観的になった方が、安全だよ」

九月の読書録05ーーーーーーー

 λに歯がない

 森博嗣

 講談社文庫(2010/03/25:2006)

 1609-05★★★★

────────────────────────────

🐱本作は『すべてがFになる』から『有限と微小のパン』までのS&Mシリーズに続くGシリーズ5作目にあたる。S&Mシリーズでは大学生だった西之園萌絵は大学院生(D2)になっている。犀川創平は相変わらずで、二人の関係に進展はあまり無いようである。

🐱Gシリーズにおける物語の進行役は主にC大学2年の加部谷恵美、彼女が慕う山吹早月(C大学大学院M1男子)、その友人海月及介(C大学2年、山吹と同年齢)が担っている。加部谷は『幻惑の死と使途』に脇役で登場(当時中学生)していて、西之園に憧れている。山吹の指導教官がN大から移った国枝桃子で、N大の西之園は国枝の指導を受けるためにC大に通い加部谷等と関わり合うことになる。犀川は要所要所で登場する。 

🐱今回の事件は、完全に施錠された建設会社の技術研究所で四人の銃殺死体が発見される「大量密室殺人」事件である。いずれも近距離から撃たれており、全員のポケットに「λに歯がない」と書かれたカードが入っている。そして、四人とも死後、強制的に歯を抜かれている。 λという文字は、φ、θ、τ、εと続く一連の事件と関係があるのか無いのか、謎が謎を呼ぶ事件である。

🐱今回の密室トリックは、なるほどと思わせるものがある。ヒントはちゃんと書かれているし、これだけ書けばわかるでしょ、と先生に言われているような感じだ。論理的に考えれば答えにたどり着く筈なのだが。

🐱犯人当てについては、著書自身あまり重視していないように見受けられる。細部に雑な面が多少あるようにも思うが、著書自身あまり気にしていないのかも知れない。

🐱今回いよいよVシリーズの保呂草潤平が登場する。そして、謎の女性(多分あの女性)も再登場。さらに、真賀田四季の影もちらついている。このシリーズは当初どこに向かおうとしているのか、なかなか分からなくて、思わせぶりな伏線は毎回出てくるのだが、なかなか繋がらなかった。そろそろ何か展開があるのか無いのか、謎が謎を呼ぶシリーズである。

🐱本書を読んで、西之園萌絵をきちんと大人に成長させてやりたいという作者の親心のようなものを感じた。今回、萌絵達は「死」というものについて真剣に考察していて、それが本書のもう一つのテーマになっているようである。

 

 

 

「頭脳だって肉体のうちだ。単なるメディアだよ」

 

 

「うん、生きているのは、自殺を保留している人たちだ」

 

 

「越えられない壁だよね。自分という名前の壁」

 

 

「やる側はとっくに分散型なのに、防ぐ側は未だに集中型」

 

 

正常な奴の方が、ずっと恐ろしくて、悲惨で、そして、冷たい。

 

 

 

 

関連図書ーーーーーーーーーー

 捩れ屋敷の利鈍

 森博嗣

 講談社文庫(2005/03/15:2002)

 1602-04★★★★

────────────────────────────

🐱Vシリーズ8作目だがVシリーズの中では番外編のようなもので、時系列的にはS&MシリーズとGシリーズの間にあたり、西之園萌絵は大学院(恐らく)M1生である。この作品で保呂草潤平は西之園萌絵と初めて対面する。

🐱森博嗣のS&Mシリーズ、Vシリーズ、四季シリーズ、Gシリーズは発表順に読むことをおすすめします。🐥

 

 

 

λに歯がない λ HAS NO TEETH (講談社文庫)

λに歯がない λ HAS NO TEETH (講談社文庫)

 

 

捩れ屋敷の利鈍 (講談社文庫)

捩れ屋敷の利鈍 (講談社文庫)