森の踏切番日記

ただのグダグダな日記です/2018年4月からはマイクラ日記をつけています/スマホでのんびりしたサバイバル生活をしています/面倒くさいことは基本しません

鎌田浩毅先生の『地学ノススメ』は現代日本人の必修科目(1)地質時代区分/プレートテクトニクス

11月の読書録07ーーーーーーー

 地学ノススメ

 鎌田浩毅

 講談社ブルーバックス(2017/02/20)

 ★★★★

────────────────────

 

地学ノススメ 「日本列島のいま」を知るために (ブルーバックス)

 

 

私は、宇宙科学には昔から興味があって一般向けの解説書をよく読むのだが、地球科学の方はこれまであまり興味がなかった。『ブラタモリ』を視聴していても地質の話をそれほど熱心に聞いていたわけでも無かった。それが何故か、最近になって急に興味が湧いてきて、とりあえず講談社ブルーバックスの『日本列島100万年史』(山崎晴雄・久保純子著) と『人類と気候の10万年史』(中川毅著) を読んでみた。どちらもなかなか興味深い内容で、これまであやふやだった地球科学に関する知識が少しはっきりしてきたように思う。この辺で、基本的なことをちゃんと把握できているか一度確認しておいた方が良いだろうと考えて、次に本書を読んでみた。

 

著者は、京大で20年にわたって地学を教えておられる地球科学者である。特に1・2回生向けの「地球科学入門」の講義は、立ち見が出るほど学生に人気で、教養科目1位の評価を得ているという。科学啓発にも熱心な先生で、一般向け解説書も数多く出版されている。「出前授業(アウトリーチ)」をされたり、テレビやラジオにもよく出演されているのでご存じの方も多いと思う。独特のファッションセンスをお持ちのオシャレな先生である。

 

これはよく聞くことだが、2011年の東日本大震災以降、日本列島の地盤は不安定になっているという。近年頻発する地震や火山の噴火は、この地盤に加えられた歪みを解消しようとして発生しているという。著者によると、千年ぶりの「大地変動の時代」が始まってしまったのだそうだ。今後、数十年という期間にわたって、地震と噴火は止むことはないだろうと著者は予想している。また、南海トラフ地震などの激甚災害は、いつ起きても不思議ではない時代に入っているということもよく聞く話である。それにもかかわらず、日本の学校教育における地学は他の理科の科目に比べて軽視されていることが、著者にとって危惧するところであるらしい。

 

そうした現状があり、本書のサブタイトルは『「日本列島のいま」を知るために』となっている。

地学の知識は、単に好奇心を満たすだけではなく、災害から自分の身を守る際にもたいへん役立つものです。その意味からも、私は一人でも多くの日本人に、地学に関心を持っていただくことを願っています。そのために日本列島で始まった種々の地殻変動がいかなるメカニズムで起きているかを理解し、効果的な対処をしていただきたいのです。

大学の講義でも「おもしろくてタメになる」をモットーに掲げている著者が、「地学の中でもわれわれに身近なテーマに絞り、ポイントをわかりやすく解説」した本書は現代日本人の必修科目といっても過言ではないだろう。以下、本書を読んで印象に残ったことや地学の基本用語などを抜き出してメモしておこうと思う。

 

 


f:id:morifumikirikita319:20171218134209j:image

 

 

 

第1章🌏地球は丸かった

※この章は「つかみ」の章で、人類の地球の形に関する認識の変遷が簡潔に説明されている。現在認識されている地球の形は、洋梨の形というよりもジャガイモのように不規則な凸凹がある非常に丸い形ということになるとか。

 

 

第2章🌏地球の歴史を編む

※この章では、岩石や地層から「時代の情報」と「環境の情報」を読み解き地球の歴史を編み上げる地質学の基本中の基本が紹介されている。

◾地層累重の法則/露頭(岩石や地層が地表に露出しているところ)/褶曲/鍵層/地層の対比

◾化石(過去の生物の遺骸や生きていた痕跡が残されたもの)/生痕化石/印象化石

示準化石(地層の年代を示す化石)~古生代では三葉虫や筆石やフリズナ中生代ではアンモナイトや恐竜、新生代では貨幣石や哺乳類など/微化石~放散虫や有孔虫や珪藻など/微化石年代

◾示相化石(過去の環境を表す化石)~サンゴやシジミやメタセコイアなど

◾ウィリアム・スミス(1769-1839 英)~地質学の父/地質図/地質学は「露頭観察に始まり、露頭観察に終わる」

 

 

第3章🌏過去は未来を語るか

※この章では、「生命と地球の共進化」(生命と地球は同時進行で変化してきたこと)という認識にたどりつくまでの論争の歴史が紹介されている。

◾生物の種としての生存期間は30万~40万年ほど。属としての生存期間は100万~300万年ほど。

◾ニコラウス・ステノ(1638-1686 デンマーク)/地球の年齢をめぐる科学と神学の対立

アブラハム・ヴェルナー(1750-1817 独)の水成説(岩石は水中での堆積作用によってできた)/ジェームス・ハットン(1726-1797 英)の火成説(岩石は地球内部の熱の作用でつくられる)/火成説が主流になる

◾ハットンの斉一説(地球の歴史では斉しく一様な現象が発生してきたと捉え、過去に起きた地質現象は現在進行中の現象と同じ自然法則のもとで形成されたとする)→「現在は過去を解く鍵」→「過去は未来を解く鍵」/ハットン~近代地質学の父/チャールズ・ライエル(1797-1875 英)~斉一説を広める

◾ジョルジュ・キュビエ(1769-1832 仏)の激変説(天変地異のあとに新しい生物が発生した)~ヨーロッパの思想界が支持(反復創造説)

チャールズ・ダーウィン(1809-1882 英)/『種の起源』(1859) /自然淘汰/漸進的進化観/斉一説と激変説の激しい論争→最大の争点は地球の年齢

◾放射年代測定法→地球の年齢は約46億年/古生代の開始は5億4000万年前/中生代の開始は2億5000万年前/新生代の開始は6500万年前

◾巨大隕石の衝突による恐竜絶滅という激変説がほとんど間違いないことが証明される/地球史上大量絶滅事件は5回起きている/生物進化に関しては現在でも斉一説もしくは中間的な漸進説が主流

 

 

🌏地質時代区分

※カッコ内は開始年代(年前)

顕生代 ーーーーーーーーーーーー

 新生代 第四紀  完新世(1.17万年)
          更新世(258.8万年)
     新第三紀 鮮新世(553.3万年)
          中新世(2303万年)
     古第三紀 漸新世(3390万年)
          始新世(5600万年)
          暁新世(6500万年)
 中生代 白亜紀 (1.45億年)
     ジュラ紀(2.01億年)
     三畳紀 (2.52億年)
 古生代 ペルム紀(2.99億年)
     石炭紀 (3.59億年)
     デボン紀(4.19億年)
     シルル紀(4.43億年)
     オルドビス紀(4.85億年)
     カンブリア紀(5.41億年)

原生代 ーーーーーーーーーーーー

 新原生代(10億年)
 中原生代(16億年)
 古原生代(25億年)

太古代 ーーーーーーーーーーーー

 新太古代(28億年)
 中太古代(32億年)
 古太古代(36億年)
 原太古代(40億年)

冥王代 ーーーーーーーーーーーー

 地球誕生(46億年)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

更新世はさらに

  後期(12.6万年)

  中期(78.1万年)

  カラブリア(180.6万年)

  ジェラシアン(258.8万年)

と、区分される。このうち中期が「チバニアン」と命名されることが確実になったという報道が11月にあった。

 


f:id:morifumikirikita319:20171222213622j:image

※顕生代は「生物が顕著に見られる時代」という意味/古生代が無脊椎動物・昆虫・魚類・両生類の時代/中生代が爬虫類の時代/新生代が哺乳類の時代

 

 

第4章🌏そして革命は起こった

◾アルフレート・ウェゲナー(1880-1930 独)/大陸移動説/『大陸と海洋の起源』(1915) /当時は大陸移動の原因を説明できなかったので受け入れられなかった/グリーンランド探検に出向いたまま行方不明になる

大西洋中央海嶺の発見(第二次世界大戦中)/大陸移動説の復活/ハリー・ヘス(1906-1969 米)の海洋底拡大説

プレート・テクトニクス (Plate Tectonics) の完成(1968)/地球科学の革命

◽地球の表面はプレートという巨大な岩盤で構成され、その厚さは平均して100kmある。このプレートは大西洋中央海嶺から生み出され、海溝に沈み込む。

◽「プレートが誕生する場所」は深海底にある /アイスランドでは唯一陸上で見られる

◽「プレートが消滅する場所」は海溝にある(沈み込み帯)/日本列島がその典型

◽「プレートがすれ違う場所」ではプレートどうしが横ずれし誕生も消滅もしない/サンアンドレアス断層(米国加州)が有名

※1970年代以降、プレートテクトニクスは地学の基本的な考え方となる。

ヒマラヤ山脈の誕生/超大陸パンゲア/大陸衝突/造山運動/アルプス山脈の形成/褶曲山脈

◽かつて南極大陸とくっついていたインド大陸が分裂、移動し、ユーラシア大陸と衝突した結果、ユーラシアプレートの下にインドプレートが潜り込むことによって、ヒマラヤ山脈が隆起した。

◽インドプレートは現在でも1年に5cmの速さで北上しているため、ヒマラヤ山脈は毎年約5mmずつ高くなっている。この力が中国内陸部でしばしば起きる地震の原因になっている。

◽ヨーロッパのアルプス山脈も、北上するアフリカ大陸が、ヨーロッパ大陸にゆっくりと衝突することによって、巨大な隆起地形がつくられたことによる。アルプス山脈も毎年約1mmほど隆起している。

 

 


f:id:morifumikirikita319:20171219192515j:image

グトルフォス Gullfoss(アイスランド

アイスランド語で「黄金の(gull)滝(foss)」

 


f:id:morifumikirikita319:20171219192536j:image

ラーカギーガル Lakagigar(アイスランド

※英語では「ラキ (Laki)」1783年に大噴火した火山

 


f:id:morifumikirikita319:20171219194816j:image

アイスランド

※2つの黒丸のうち左下が首都レイキャビク Reykjavík。その下を大西洋中央海嶺 Mid-Atlantic Ridge が通っている。グトルフォスはレイキャビクから右上(北東)方向の中央の火山の下(南)辺り。ラーカギーガルは、大西洋中央海嶺が交差しているところにある二つの火山の左の方。

※右上の黒丸はシンクヴェトリル地溝。次の記事で紹介します。

 

 


f:id:morifumikirikita319:20171219144928j:image

プレート

 


f:id:morifumikirikita319:20171219154650j:image

左から、プレートが誕生する場所、プレートが消滅する場所、プレートがすれ違う場所。

 

 
f:id:morifumikirikita319:20171219155939j:image

大陸の推移

上左がペルム紀末(2億5000万年前)超大陸パンゲア/上右が三畳紀末(2億年前)ローラシア大陸ゴンドワナ大陸・テチス海/中左がジュラ紀末(1億4500万年前)/中右が白亜紀末(6500万年前)/下が現代(図中の年代は多少異なります)

 


f:id:morifumikirikita319:20171219150835j:image

インド大陸の移動

 

 


f:id:morifumikirikita319:20171223164140j:image

🐱次の記事へと続きます

鎌田浩毅先生の『地学ノススメ』は現代日本人の必修科目(2) - 森の踏切番日記

第5章🌏マグマのサイエンス(火山)

第6章🌏もうひとつの革命(プルームテクトニクス

鎌田浩毅先生の『地学ノススメ』は現代日本人の必修科目(3)大量絶滅/巨大地震/熊本地震/破局噴火 - 森の踏切番日記

第7章🌏大量絶滅のメカニズム

第8章🌏日本列島の地学(地震

第9章🌋巨大噴火のリスク